※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、総理、新型コロナワクチン接種担当大臣、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:233KB]

【要請書】新型コロナウイルスワクチン不足の早急な解消と、
接種体制確保改善を求める緊急要請書

2021年7月6日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 新型コロナウイルスワクチン接種に向けたご尽力に敬意を表します。
 さて、新型コロナウイルスワクチン接種体制の確保については、様々な困難を乗り越えて、私たち開業医も日常診療を行いながら、自治体による集団接種会場への医師・医療従事者の派遣や、医療機関における個別接種体制の確保に取り組み、6月7日には1日に100万回の接種を達成し、6月23日には117万回の接種を実現しました。
 ところが7月に入って、国から自治体に供給されるワクチンの量が大きく不足し、予約を一時停止する自治体が発生しています。ワクチンの供給を絞られた医療機関では、予約した希望者に接種延期の連絡・調整に追われています。
 菅総理は「7月末までに希望する高齢者に打ち終える」と約束しましたが、先週金曜日(7/2)の接種は70万回に激減。このままでは公約の実現は不可能となります。
 厚生労働省の「新型コロナワクチンの供給の見通し」では、6月は週あたり13,500〜16,000箱の供給見通しでしたが、7月は10,600〜11,000箱の供給見通しでピーク時の7〜8割程度に減少しています。
 接種体制は、医療機関、医師、医療従事者が様々な困難を乗り越え、希望するすべての人たちにワクチン接種を実現するために作り上げたものであり、これが実現するまでは、接種体制を引き下げるべきではありません。
 政府は、「10月から11月の間に、接種を希望するすべての人にワクチンを接種したい」としていますが、変異株が猛威を振るい始めた中では、この目標を前倒しする必要があり、そのためには、新型コロナワクチンの確保と接種体制の維持が不可欠です。ましてや、オリンピック期間中であることを理由に接種に制限をかけることなどあってはなりません。
 当会は、地域においてワクチン接種に携わる保険医の団体として、下記の点の改善を早急に行うよう、強く求めるものです。

1. 政府は、ファイザー社の新型コロナワクチン不足を早急に解消すること

 政府のファイザー社の新型コロナワクチン供給見通しでは、自治体が希望するワクチンの供給量を確保できません。自治体が希望するワクチン総量確保に全力を挙げてください。

2. 職域接種へのファイザー社ワクチンの活用は行わず、モデルナ社ワクチン確保を

 職域接種で使用しているモデルナ社のワクチン不足が見込まれるとして、一部議員等はファイザー社製のワクチンの職域接種への活用を提言していますが、ファイザー社ワクチンは大きく不足しています。ワクチン接種の基本は、自治体及び医療機関接種です。ここで使用するファイザー社ワクチンは大きく不足しているにもかかわらず、これを大企業中心の職域接種に回すことは、あってはなりません。
 職域接種で解決すべきはモデルナ社のワクチン不足であり、政府はファイザー社と合わせてモデルナ社のワクチンの確保にも全力をあげてください。

3.自治体への連絡・相談を強めること

 自治体からは、供給日・供給量の連絡が遅く計画が立てにくいとの声が寄せされています。自治体と連携してワクチン接種に取り組む医療機関は、更に影響を受けます。自治体への連絡を早めるとともに、希望や相談に対応する体制を確立してください。

4.新型コロナウイルスワクチン接種費用を引き上げること

 新型コロナウイルスワクチンの接種にあたっては、感染防御対策の徹底、有害事象等への対応、予約管理などに多くの労力が必要です。
 こうした対応に見合うよう、接種費用は少なくとも初診料と同額(2,880円)とし、時間外や休日は、初診料の時間外加算(850円)、休日加算(2,500円)と同額を上乗せしてください。訪問診療とは別日に在宅でワクチンを接種する場合は、往診と同額を加算してください。また、予約管理にかかる多大な負担への費用補填も新設してください。
 なお、これらの取り扱いは、4月に遡及して実施してください。

5.有害事象・副反応への対策を強化すること

 新型コロナウイルスワクチンの接種に起因した有害事象・副反応に関し、コロナ禍の「有事」に鑑み、ワクチンとの因果関係を問わず救済し、補償額を引き上げてください。
 また、健康被害にかかる医療費は全額を公費で負担してください。少なくとも無保険者や国保資格証明書を交付された方の健康被害についても窓口負担なく医療が受けられるようにしてください。

6.ワクチン接種者と非接種者において、差別的な扱いがされないようにすること

 様々な原因でワクチンを接種できない方がいます。
 職場・学校等の集団生活の場においてワクチン接種者と非接種者において差別的な扱いが生じないよう、特に「接種証明」のようなもので社会的・福祉的サービス等が受けられないことがないよう、十分な配慮を行ってください。

7.ワクチンの国内生産など、予防接種施策を強化すること

 mRNAワクチンの国内製造を進めるとともに、新型コロナウイルスワクチンを含めた国産でのワクチン開発を進めるため、財政支援を強化してください。同時に、ワクチン製造工程に対する監督の強化を図ってください。予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)を創設し、予防接種施策を強化してください。

以上

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