※全国保険医団体連合会では、下記の声明を発表し、マスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:79KB]

【談話】「黒い雨」訴訟の上告を断念し、
速やかに被爆者健康手帳を交付せよ

2021年7月16日
全国保険医団体連合会
非核・平和部長
永瀬 勉

 

 7月14日、広島高裁は、原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びて健康被害が生じた広島市や広島県安芸太田町の住民84人が、広島市と広島県が行った「被爆者健康手帳の交付申請却下処分」の取り消しを求めた訴訟で、一審に続き、原告全員を被爆者と認める判決を言い渡した。

 広島高裁判決は、原告の訴えを全面的に認め、「黒い雨」が降った範囲は、これまで国が根拠としてきた「広島市中心部の爆心地から市北西部にかけて広がる長さ約19キロ、幅約11キロの『大雨地域』(いわゆる「宇田雨域」)」にとどまるものではなく、「(より広い範囲に)「黒い雨」が降った蓋然性があるというべきである」と判断した。その上で、「原告はいずれも雨が降る間のいずれかの時点で降雨域にいたと認められるから、『黒い雨』に遭ったといえ、被爆者健康手帳の交付を義務づけるのが相当である」として、84人全員への被爆者健康手帳の交付を命じている。

 国の「大雨地域」、「小雨地域」の線引きは、76年前の原爆投下直後の混乱期に、しかも、わずか数人で調査された根拠薄弱なものであった。この間、長年にわたって「大雨地域」周辺の地域で「黒い雨」により被爆した人々は、その区域拡大を求めてきている。

 国は、被爆76年が経過し、被爆者が高齢化するもとでなお、原爆被害の「積極的救済」を事実上拒否している。ただちに被爆者に「受忍」を強いる態度を改めるべきである。そして、被爆者認定基準のありかたを抜本的に改め、「黒い雨」により被爆したすべての人々を被爆者と認めるべきである。

 既に本裁判の被告である広島県の湯崎知事は、国に対し上告断念を求める考えを示している。国は、「黒い雨」による被爆者の長年にわたる苦しみに心を寄せ、絶対に上告しないことを求めるものである。そして、一刻も早く、「黒い雨」により被爆したすべての人々を被爆者と認め、「被爆者健康手帳」を交付することを強く求めるものである。

以上

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