※全国保険医団体連合会では、下記の要請書を発表し、厚生労働大臣及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:154KB]

【要望書】ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関する要望

2021年10月11日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
 さて、10月1日開催の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、HPVワクチンの積極的接種勧奨差し控えを中止する時期に来ているとの認識で意見が一致するとともに、接種後に症状が出た人に対応する医療体制の強化や、接種の呼びかけを控えていた間に接種を受けられなかった人の接種機会の確保についても検討する必要があることなどの意見が出されました。
 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンは、平成25年4月から定期接種となりましたがワクチン接種後に持続的な疼痛等の訴えがあったため、同年6月14日には、@接種の積極的な勧奨とならないよう留意する、A周知方法については個別通知を求めるものではないこととする勧告を都道府県知事あてに発出しました。
 その後、HPVワクチン接種率は大きく低下し、これを憂慮したWHOが名指しで日本を批判する中で、令和2年10月9日には25年勧告から「周知方法については個別通知を求めるものではない」との文言や、HPVワクチン接種予定者に対して「積極的な勧奨を行っていないことを伝える」よう求めた文言が削除されました。これを積極的に受けた自治体では接種の取り組みが広がっています。しかし、25年勧告の「市町村長は、接種の積極的な勧奨とならないよう留意する」との文言が残っていることなどもあって、2002年以降に生まれた方の接種率は非常に少ない状況です。
 日本産科婦人科学会のホームページでは、日本においては毎年約1万人の女性が子宮頸がんに罹り、約2,800人が亡くなられ、特に、若い世代の罹患率が増加していることが紹介されています。また、HPVワクチン接種を早期に取り入れたオーストラリアやイギリス、アメリカ、北欧などの国々では、HPV感染や前がん病変の発生が有意に低下していることが報告され、国内でもHPVワクチンの有効性についての研究が進行中であることが紹介されています。なお、現在国内で定期接種の対象となっているHPVワクチンは2価と4価ですが、海外では9価ワクチンが定期接種とされています。
 一方、HPVワクチン接種歴がある方で、なんらかの症状を呈する方がいます。その中には、思春期に多いとされる多様な症状を呈する患者さんも少なからずいます。このような症状を有する患者さんに対する治療体制・支援体制の確保は不可欠です。

 以上を踏まえ当会は、HPVワクチン定期接種の改善を求め次の事項の早急な実現を求めます。

一、 HPVワクチンについて「市町村長は、接種の積極的な勧奨とならないよう留意する」とした平成25年勧告を廃止すること。
一、 9価ワクチンを早期に定期接種の対象に加えること。また、HPVワクチン定期接種の対象に男子も加えること。
一、 積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逸した方が費用の心配なく接種できるよう、キャッチアップ接種への財政措置を講じること。
一、 HPVワクチンに限らず、ワクチンによる健康被害の補償の拡充、並びに多様な症状を呈する患者さんの治療・支援体制を確保すること。
一、 予防接種施策を評価・検討する仕組み(日本版ACIP)を創設し、情報公開を含め予防接種施策の強化を行うこと。

以上

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