※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、マスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:549KB])。

【談話】金パラ「逆ザヤ」解消に向け引き続き議論を
12月22日中医協総会を受けて

2021年12月23日
全国保険医団体連合会
社保・審査対策部長(歯科)
新井 良一

 

  12月22日の第507回中医協総会において、個別事項(その11)として「歯科用貴金属材料の基準材料価格改定について」が検討された。厚労省は随時改定について、変動幅の変更(@現行のまま、A一律5%、B一律0%)、改定2か月前までの平均素材価格を用いる(現行は3か月前まで)ことを論点として提示した。

@「逆ザヤ」解消に向け一歩前進

保団連は「逆ザヤ」の抜本解消とともに、最低限改善すべき点として、価格変動幅の撤廃と、素材価格の参照期間を2か月後倒しすることを求めてきた。提案は保団連の要望を不十分ながら反映しており、金パラ「逆ザヤ」問題解決に向けた一歩前進としてまずは評価したい。
審議の中では、2か月前までの平均素材価格を用いることには異論は出されず、具体化が進むものと見られる。変動幅については、一律5%では現行制度と比較して優れた対応ではなく、タイムリーな改定とは言えないとの指摘がなされる一方、0%では改定が頻回となることに伴う事務負担等の問題も指摘され、結論は明確にはなっていない。
 実勢価格との乖離を多少でも緩和するためには、変動幅に関わらず改定を実施することが必要である。保団連として、変動率は一律0%とするよう重ねて求める。

A今後の抜本的な対応の必要を含め確認すべき

 制度改善が図られることは前進だが、今次の改善は現行制度の枠内での緩和策に過ぎない。タイムラグの問題や市場実勢価格に基づかない改定であること等、随時改定の根本的な問題点は解消されない。
 図に示す通り、厚労省のシミュレーションと市場実勢価格変動をあわせれば、随時改定では急激な価格変動への機敏な対応は不可能であることが改めて浮き彫りになる。現行制度の枠組みにとどまらない解決策の検討が、今後の大きな課題となる。
 その点について、日本歯科医師会の林正純委員が「中長期的な抜本対応を検討しながら次善の策として進めるべき」と指摘していることは重要である。引き続き抜本改善に向けた議論を要することを中医協として確認し、継続課題として抜本解決に向けた検討を行うことを答申書の付帯意見等に明記すべきである。
 また、制度改善後の市場価格と告示価格の乖離の状況について、厚労省の責任で継続的な検証を速やかに行うことが必要である。検証にあたっては、市場実勢価格の変動を随時把握できるよう、厚労省として適切な仕組みを速やかに確立するよう求める。

B2022年4月改定では別途の対応が必要

 なお、2022年4月の基準材料価格改定では、素材金属の価格変動から告示価格は大きく引き下げになると見られる。制度改善のタイミングで、告示価格の引き下げにより「逆ザヤ」となれば、現場の不公平感をさらに強める結果にもなりかねない。
 また、長期にわたる価格上昇の中で累積してきた「逆ザヤ」は、今後の制度改善によって解消されるものではなく、別途補填策が講じられるべき問題である。
制度改善とあわせてこれらの課題への対応についても検討されるべきである。

Cより良い歯科医療のため、金パラ「逆ザヤ」問題の抜本解決を

 保団連は、「金パラ『逆ザヤ』シミュレータ」等による実勢価格調査や会員署名等により、「逆ザヤ」の実態と現場の深刻な状況を明らかにし、その改善を求めて厚労省への要請やマスコミへの情報発信に取り組んできた。
 現場の切実な要望により金パラ「逆ザヤ」問題がクローズアップされ、複数のマスコミがこの問題を報じるなど、歯科医療を受ける患者・国民の問題としても広く関心が寄せられた。こうした動きが、不十分ながら制度改善に結実することは、歯科医療改善の運動において重要な経験である。
 金パラ「逆ザヤ」に加えて、コロナ禍という二重苦により、多くの歯科医療機関で苦境が続いている。歯科医療機関の経営と患者・国民の健康を守るため、保団連は引き続き金パラ「逆ザヤ」の抜本解決を目指し、運動を進めるものである。

以上

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