※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、総理、厚労大臣、外務大臣、ワクチン担当大臣、コロナ担当大臣、国会議員及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:232KB])
【要望書】オミクロン株の感染拡大から
国民の命と健康を守るための緊急要望書
2022年1月13日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
新型コロナウイルス感染症が急拡大し、第6波に入った。しかも、感染の主流はオミクロン株であり、第5波を超える急激な感染拡大となっている。
オミクロン株に関する初期研究では、デルタ株に比べて入院・重症者リスクが低く、若年層を中心に重症化例は少ないと報告されているが、これを元に「リスクが少ない」と判断することは、非常に危険である。
重症者リスクが低くても感染力が非常に高いオミクロン株が猛威を振るうアメリカでは、CDCの集計で1月10日の新規感染者数は140万人を超え、11日時点の入院患者も14万5,982人となり、昨年1月に記録した14万2000人を超えて過去最多を更新し、医療体制が逼迫している。子どもの感染者数及び入院患者数も過去最多である。
日本においても感染者数が急拡大している。オミクロン株の拡大は、医療供給体制のひっ迫を招き、国民の命と健康を脅かす危険が高い。感染拡大を防ぎ国民の命と健康を守るためには、@ワクチン接種を含めた予防の徹底、A検査の徹底による感染者の把握、B治療体制の確保・充実の3つの徹底が、一層重要である。
なお、在日米軍が一方的に検疫措置を緩和し、出国時の検査を実施せず、かつ、マスク無しで基地の外で飲酒していたことも感染拡大の大きな要因である。在日米軍が日本国民の命と暮らしを脅かすことのないように強く改善を求める必要がある。
以上をふまえ、次の事項の実現を強く求めるものである。
記
1.ワクチン接種を含めた予防の徹底について
(1) |
3回目のワクチン接種を自治体や医療従事者に丸投げするのではなく、最大限、迅速な接種計画の前倒し策定と実施に国が責任をもって取り組むこと。 |
(2) |
国としてワクチンの有効性・安全性をしっかりと検証するとともに、有害事象が発生した場合の補償・治療体制を構築すること。 |
(3) |
国が医療機関に支払う新型コロナウイルスワクチンの接種費用を、少なくとも初診料と同額(2,880円)とし、時間外や休日は、初診料の時間外加算(850円)、休日加算(2,500円)と同額を上乗せすること。12歳未満児に対する加算を設けること。訪問診療とは別日に在宅でワクチンを接種する場合は、往診と同額を加算すること。 |
(4) |
マスク、手洗い、消毒、3密回避など、感染対策の徹底を改めて全ての国民に訴えること。これが実現できるよう、感染防止対策の費用を全ての国民、教育機関、医療機関、福祉施設、高齢者施設、中小企業等に支給すること。 |
2.PCR検査の徹底について
(1) |
オミクロン株拡大を踏まえ、診療・検査医療機関に限らず、希望する全ての医療機関でPCR検査が公費負担で実施できるようにすること。 |
(2) |
検査の結果が、陰性か陽性かにかかわらず初・再診料、検体採取料、院内トリアージ実施料、二類感染症患者入院診療加算など新型コロナウイルス感染症検査に不可欠な診療費用についても、患者負担が発生することなくすべて公費負担とすること。 |
(3) |
PCR検査の診療報酬点数の大幅な引き下げは、検査体制の弱体化につながる危険性がある。検査が赤字とならないよう、検査料・判断料を引き上げること。 |
(4) |
全ての医療機関、介護保険施設・障害者施設等の職員及び入院・入所者については、定期的なPCR検査を全額公費負担により実施できるようにすること。 |
(5) |
教育機関の職員及び園児・児童・生徒・学生についても、定期的なPCR検査を全額公費負担により実施できるようにすること。 |
(6) |
無症状者を含めた希望するすべての人が費用負担なくPCR検査を実施できるよう、検査キットの確保・検査体制の確立に責任を持つこと。 |
3.治療体制の確保・拡充を図ること
(1) |
保健所の体制を強化し、公立・公的病院など病床削減計画を見直すこと。 |
(2) |
中等症以上及び重症化リスクのある軽症患者が入院治療を受けられるよう、コロナ対応病床の確保及び、当該医療機関に必要な報酬を支払うこと。 |
(3) |
軽症患者等を対象とするホテル等を借り上げた宿泊・療養施設の十分な整備と、必要な医療スタッフ配置、往診体制の確保に責任をもち、必要な報酬を支払うこと。 |
(4) |
自宅療養を余儀なくされる人の健康観察やケアの提供に万全を期し、重症化の発見が遅れないようにするとともに、生活を保障する措置を行うこと。 |
(5) |
外来等感染症対策実施加算、入院感染症対策実施加算を復活すること。乳幼児感染予防策加算の減額・廃止を撤回すること。 |
4.在日米軍が日本国民の命と暮らしを脅かすことのないようにすること
(1) |
在日米軍に入管法や検疫法を適用させること。入国禁止・外出禁止含めた感染防止対策を徹底させること。 |
(2) |
基地内の感染状況を速やかに自治体に報告させるとともに、自治体と協同して感染の拡大防止に努めさせること。 |
(3) |
在日米軍からの感染再発防止のためにも、日米地位協定を抜本的に改正すること。 |
5.下記の取り組みを行うこと
(1) |
感染の拡大によって濃厚接触者が増加し、医療従事者をはじめとしたエッセンシャルワーカーの不足が深刻化している。エッセンシャルワーカーへのワクチン接種の前倒し実施や、感染拡大地域への人材派遣を強力に推し進めること。 |
(2) |
新型コロナ感染症そのものの調査・分析を含め、オミクロン株の疫学的特徴及び重症化リスクの分析・評価を行うこと。 |
(3) |
ワクチン・検査パッケージ制度による飲食やイベント、人の移動等の各分野における行動制限の緩和は、当面中止すること。 |
以上