【主張】社会保障を守る政治への転換の年にしよう
(全国保険医新聞2022年1月25日号より)
今年も新年早々、新型コロナウイルス・オミクロン株感染が猛烈な勢いで拡大している。米軍基地由来で感染拡大した沖縄をはじめ、全国で深刻化している。
医療従事者として、感染症対策、健康維持に万全の注意を払いながら、社会保障の改善と地域医療の発展のため、一丸となって根気強く取り組む、希望の1年を過ごしたい。
新自由主義路線を終わらせる運動は今年も続く。医療・社会保障は自助・自己責任と切り捨てる経済成長一辺倒の政治は、貧困と格差の拡大をもたらし、普通の暮らしを希望する国民の願いを妨げてきた。
岸田政権は、7月の参院選を視野に、日本経済の行き詰まりを打開し、刷新感をアピールする意図で「新しい資本主義」を持ち出した。しかし社会保障削減、大企業・富裕層優遇、「成長なくして分配なし」という路線を踏襲した上で、憲法改正実現本部を設置、敵基地攻撃能力の検討を表明するなど、私たちが開業医宣言で誓った「平和の希求」とは真逆の政治に舵を切った。
岸田政権の政治戦略は、昨年末に閣議決定した2022年度予算案からも明らかだ。一般会計予算107兆円の税収は、3割を超え最大の税目となった消費税頼みだ。歳出では社会保障費自然増の6,600億円を2,200億円削減する一方、防衛費は583億円増だ。「新しい資本主義」の実態は、大企業・富裕層優遇を維持しながら防衛費を増やし、国民の生活に直結する社会保障を削る政策だ。
社会保障削減は診療報酬マイナス改定に顕著に表われている。今回の診療報酬改定は、5期連続のマイナス改定であり、全体で0.94%(約1,300億円)減となった。リフィル処方箋解禁、小児のコロナ特例加算廃止など、診療の質の低下を招く内容が目立つ。また、議論が進むオンライン診療の初診解禁も懸念が大きい。理不尽な改定を会員に知らせ、運動のエネルギーにしなければならない。
全国51協会・医会の統一行動として、参院選を見据えて、75歳以上の高齢者医療費窓口負担2倍化の10月実施を許さない署名活動を、待合室から例年以上の勢いで取り組み、国会を動かそう。
社会保障改善の取り組みは、診療する私たちの身の回りから出発することが重要だ。患者さんとの信頼関係を強固なものとする診療、地域医療を良くしていく意欲が掻き立てられる診療体制が可能な社会保障の充実を実現していこう。
以上