外来管理加算５分ルールで小児科等に打撃

　全国保険医団体連合会が実施した、外来管理加算の新算定要件（いわゆる「5分ルール」）の影響調査で、診療所・病院（200床未満）の外来管理加算の算定が、20%以上減少したことが判明した。当初、厚労省が主張した10%減とは大きく乖離した結果となり、現場では患者とのトラブルや混乱が発生していることも明らかになった。

診療所、病院で20％以上の減少
　 外来管理加算の算定率は診療所全体では、08年3月58.7％、同年4月45.3％となり、前月比で77.2％となった。
　 病院の算定率は07年4月58.5%、08年4月45.8％で、前年同月比で78.2％となった。
　 算定数では全体で20%以上の減少となった。
　 各科毎の減少幅は、皮膚科が24.4ポイント、小児科20.1ポイント、産婦人科17.6ポイント、内科15.4ポイントと続き、08年度診療報酬改定の趣旨である、小児科の重点評価とは相反する結果となった。
　 同加算点数は、基本的な診療に対する低点数を事実上補うものとなっていただけに、内科など処置の少ない診療科を中心に、深刻な打撃を与えていることが明白である。
　 厚労省は当初、時間要件変更の影響は10％の算定減であり、これにより約200億円の財源を捻出できるとしていた。しかし今回の調査によれば、全体22％の減少であり、診療所全体で440億円もの減収が予想される結果となった。

時間要件、カルテ記載の新要件、反対が大勢
　 時間要件の導入に関しては診療所88.6%、病院80.2%が反対し、算定時の際のカルテ記載の要件（ＳＯＡＰ方式）については診療所80.1%、病院68.8%が反対している。
　 カルテ記載の要件については、「患者に向かって診察しているよりも、書き物に追われている気がする」、「カルテ記載に時間がかかり、患者の待ち時間は増えつつも患者との対話の時間は短くなり、診療時間も延長しなくてはならない。何のための改定だかよく分からない」という疑問の声があった。

　
現場に怒り。トラブル・混乱も発生
　 新算定要件については、医療費削減ありきの改定、減収以外のなにものでもないという声が多かったが、それ以上に「熟練した医師ほど診察は簡潔明瞭に行える」、「診療科患者の疾患の違いに応じて診察時間が変化する」、「丁寧な診察と必要十分な診察の違いを考慮していない」「チーム医療を無視している」など、医療の特性を理解しない机上の発想に対する怒りの声も目立った。
　 また「時計を気にしていると診察に集中できない」、「診察時間の長さを巡って患者とトラブルになった」「患者の待ち時間が長くなった」など医師と患者の信頼関係の悪化、患者への不利益を懸念する意見も見られた。
　 さらに「このままでは医師の海外への逃散も起こり得る現実として理解してほしい」といった声や、減収に加えて、時間だけでは計れない医師の無形の技術を理解していないことに対して怒りの声が強くあがっている。

道理も根拠もない5分ルールは即時撤廃すべき
　 先般、保団連の情報開示請求によって、厚労省が時間要件の根拠として中医協に示した統計資料は、「再診」患者の「診察」時間とは関係がないことが判明している。
　 「5分ルール」には何らエビデンスもなく、医療への無理解から作られ、現場に無用な混乱をもたらし、患者に不利益を与え、経営にも打撃を与えて医療崩壊を促進する。外来管理加算の新算定要件は直ちに撤回すべきである。保団連はあらためて厚労省に対して、即時撤回を要求している。

調査概要
期間：5月1日〜6月25日（先行実施の協会あり）
依頼数：診療所29683、病院2212　
回収：診療所4241（14.3%）、病院552（25.0%）
有効：診療所3402（11.5%）、病院441（19.9%）
対象：保団連の会員が中心。　35協会・医会より集約。