2008年7月25日
厚生労働大臣 舛添 要一 殿
全国保険医団体連合会会長
住江 憲勇
2008年6月20日付けで厚生労働省保険局医療課から、全国保険医団体連合会(以下、当会)に対して抗議文(資料1)が郵送されました。
抗議文には文書番号、公印がないことから、厚生労働省の公文書による抗議ではなく、怪文書の類として無視するところでありますが、前日に保険局医療課より抗議文を送ったとの電話があったため、少なくとも厚生労働省職員による文書であると判断しました。
発端は、2008年4月の診療報酬改定で外来管理加算に「概ね5分を超えて診察を行った場合」という算定要件が加わったこと(以下、5分ルール)にあります。
当会は2007年12月7日の中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会に提出された、「内科診療所における医師一人あたりの、患者一人あたり平均診療時間の分布」のグラフに疑問があったため、貴職に対し情報開示請求を行いました。
その結果、このグラフが同年7月に実施された「時間外診療に関する実態調査」から作成されたことが判明しました。
「時間外診療に関する実態調査」は厚生労働省がみずほ情報総研株式会社に委託して行われたものです。
抗議文には「当省が行った調査については、医療機関に対し調査への協力を依頼する文書において『今後の診療報酬改定の検討資料とすることを目的に・・・実施することとなりました。』とし、平成20年度診療報酬改定における検討で用いることを明確にして実施したものであり、調査の結果を外来管理加算の検討に用いることについては、何ら不正使用に当たるものでないことは明らかです。」と述べています。
しかし、調査対象医療機関に送付された調査用紙には、保険局医療課の協力依頼文書と別に、みずほ情報総研株式会社が作成した、もう一通の協力依頼の文書が同封されており、これには、「このたび厚生労働省では、今後の時間外の診療体制のあり方を検討するため、」とあります。しかも、同文書には「上記目的以外に使用することは一切ございません」と明記されています。にもかかわらず、本調査のデータが全く目的の異なる「外来管理加算の『見直し』」に使用されたため、当会はこれを目的外使用、不正流用と判断し、ホームページ並びに当会の新聞に掲載しました。現場の医師であれば、当然の感覚です。
また、開示された情報内容および5分ルールの決定過程に疑問があったために、当会担当理事より保険局医療課にお電話した所、担当者より、質問は文書で提出して欲しいと言われました。
そこで6月10日に文書にて質問状(資料2)を提出しました。しかし、未だに回答を頂いておりません。
それどころか、6月16日以降は電話も一切取り次いでもらえず、代わりに6月17日、保険局医療課より当会事務局へ「不正流用のキャンペーンを止めるように」と電話で告げられました。さらに6月20日に抗議文を送ったとの予告電話があり、その翌日に配達証明付きで抗議文が郵送されました。
抗議文には当会担当理事の実名まで記されています。まるで恫喝ではありませんか。
全国保険医新聞の記事について、抗議文には「『今後の時間外の診療体制のあり方を検討するため』」については、そもそも誤った開示資料の文言をそのまま用いて執筆しています。」とありますが、この引用はみずほ情報総研株式会社が作成した文書から引用しているものです。「誤った開示資料」からの引用ではありません。新聞記事と2つの文書を比較すれば容易にわかる事実です。
当会に対して、抗議文は「単なる事実誤認の域を超え、意図的に誤った情報を流布したものであると言わざるを得ません。」と述べていますが、上記のように事実誤認は保険局医療課のほうにあります。そこで当会は6月25日、貴職宛てに抗議文の撤回を求める文書をお送りした次第です。
電話を取り次いでもらえなかったため、やむなく7月3日保険局医療課を訪問しました。
幸い担当者と面談の機会を得ました。しかし、担当者は「うちの文書には、今後の診療報酬改定の検討資料とすることを目的に、と書いてあるから不正流用ではない。みずほ情報総研の文書に何と書いてあろうと厚生労働省は関知しない。不正流用でないものを不正流用と言うのはけしからん」と終始激昂し、当会がそのように判断した理由については耳をかしてもらえませんでした。
抗議文について、事実誤認は保険局医療課のほうである事を説明しようとしましたが、「不正流用でないものを不正流用と言うから出したまでのこと」と説明すら受け付けてもらえませんでした。
質問状については「あれは、最初お互いの信頼関係があったので、そう申し上げたもの。不正流用でないと何度説明しても聞き入れず、今は信頼関係がない。よって回答しない」と切り捨てられました。
これが厚生労働省の官僚の発言でしょうか。
当会は不正流用であるか否かを論じるために保険局を訪れたのではありません。今、5分ルールによって医療現場は大変な混乱の中にあります。その決定過程に疑問があるから情報公開を請求し、質問状を提出しました。いつまで待っても回答がないために再度回答を求め、いわれなき抗議文が郵送されたので、その撤回を求めて訪問したのです。医師もまた国民の一員です。
よって、下記につきまして、舛添要一厚生労働大臣の誠意あるご回答を請願するものです。
「今は信頼関係がない。よって回答しない」は、厚生労働省の官僚の発言としてふさわしいのでしょうか。
厚生労働省の官僚は、「信頼関係がない」という理由で、一方的に国民への回答を拒否してよいものでしょうか。
厚生労働省の官僚は、国民が意に沿わない主張を繰り返したという理由で、公文書でもない抗議文を送りつけてよいものでしょうか。
国民は、厚生労働省に対し質問の回答を求め、事実誤認に基づく抗議文の撤回を求めたことで、あれほど叱咤されるのでしょうか。
以上