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保団連 夏季セミナーで論点探る
診療報酬引き上げ 医師増員 提供体制…どうする医師の働き方


全国保険医新聞2018年7月15日号より)

 

 

 月の労働時間に上限を設けることなどを定めた働き方改革関連法が成立した。しかし医師は応召義務の特殊性などの論点整理のために5年間適用が猶予される。保団連は7月7、8日に東京都内で開いた夏季セミナーで、長時間労働が深刻な医師の働き方改革をテーマにシンポジウムを行った。医師数増員とそれを支える診療報酬の引き上げ、診療科・地域偏在解消などが不可欠の論点として浮かび上がった。

 

需給、偏在と一体で

   
   
   
   

 労働時間の上限設定に関して、業務と自己研鑽の区別が一つの論点だ。労働者健康安全機構理事長で昭和大学名誉教授の有賀徹氏は、施設基準に関わる専門医取得のための論文作成などの例を示し、自己研鑽と公務との関係は病院ごとに異なるとした。また、診療科によって拘束される度合いも異なり「働き方改革は一律には決められない」と述べた。
 有賀氏はまた、「労働時間の上限を設定する場合、生産性の改革がなければ医療のサービス量を維持できない」と話し、「タスクシフティングによる医師の業務量軽減が議論されるが、看護師やメディカル・クラークなどコ・メディカルの確保が前提だ」と指摘した。
 最後に、「働き方改革が成就するには、医師需給と地域偏在、診療科偏在との解消を合わせ、三位一体で進めなければならない」と話した。

 

医師不足が長時間労働まねく

 全国医師ユニオン代表の植山直人氏は日本の医師数がOECD諸国の平均より少なく、労働時間も欧州諸国より長くなっていると話し、「医師数の差が労働時間にリンクしている」と指摘。「医師不足のまま長時間労働を是正すると、救急医療からの撤退、医療の質の低下など、深刻な地域医療の崩壊が懸念される」と述べた。
 植山氏は「医師数の増員による医師不足解消」を強調し、▽夜勤後などの交代制を全面導入した場合の必要医師数を地域別・診療科別に推計▽計画的な医師増員▽地域・診療科偏在を生まないルール作り▽医学生への適切な診療科選択の進路指導―などが必要だと訴えた。

 

養成に課題

 今後の医師養成に関わって、ときわ会常磐病院の山本佳奈氏は今年度開始の新専門医制度の問題を提起。「新制度は地域医療に従事したい若手医師や女性のライフプランを全く考慮していない」と強調した。
 新制度では後期研修医は基幹施設での半年以上の勤務が義務付けられる。山本氏は福島県南相馬市内の病院で初期研修を終えた当初、同地の地域医療に従事しながら産婦人科の専門医になる研修を受けることを希望したが、福島県内で研修先として認定された基幹施設は県立医大だけだった。「専門医取得のため地域を離れるか、専門医制度に乗らずに自分独自のキャリアを築くかという選択を迫られ、後者を選んだ。現在はいわき市内の病院で内科の外来診療をしながら、研究にも力を入れている」と語った。

 

開業医と勤務医が共闘を

 開業医の立場から問題提起した保団連の高本英司副会長は「開業医と勤務医は絶対的に不足しており、その前提で地域偏在が議論されるべきだ」と指摘した。「開業医と勤務医は労働条件改善に向けた共闘が必要」と強調し、医療機関の経営を支え、人件費を確保するには技術料を中心に診療報酬引き上げが必要だと主張した。
 高本氏はまた、医科開業医会員の開業期間が短くなっている可能性を指摘。「初期投資の高額化や、在宅医療点数の複雑化、24時間対応の厳しさなどが、地域医療に貢献しようという使命感をなえさせているのではないか」と語った。診療報酬の不備によって、病診連携など地域医療を支える体制の維持が懸念される実態が示唆された。

 

以上