ホームニュースリリース・保団連の活動保団連の活動など 目次

 

難病患者の医療改善探る
森 幸子 JPA代表理事と対談


全国保険医新聞2018年11月5日号より)

 

森・JPA代表理事 住江・保団連会長

 

 原因不明で治療法が未確立などの難病の患者に対する医療費助成が制度変更され、重症度分類で軽症とされた患者ら約14万7000人が今年1月から助成の対象外となった。患者負担増の問題だけでなく、治療法の開発、改善などの難病研究への影響も懸念される。難病患者ら約26万人で構成する「日本難病・疾病団体協議会(JPA)」代表理事の森幸子氏と保団連の住江憲勇会長が、難病医療制度の改善や保団連が呼び掛ける「ストップ患者負担増」の取り組みについて語り合った。

 

「これ以上の負担受け入れられない。共通の思い」

 原因不明で治療法が未確立などの難病の患者に対する医療費助成が制度変更され、重症度分類で軽症とされた患者ら約14万7000人が今年1月から助成の対象外となった。患者負担増の問題だけでなく、治療法の開発、改善などの難病研究への影響も懸念される。難病患者ら約26万人で構成する「日本難病・疾病団体協議会(JPA)」代表理事の森幸子氏と保団連の住江憲勇会長が、難病医療制度の改善や保団連が呼び掛ける「ストップ患者負担増」の取り組みについて語り合った。

 

重症化招く

住江 難病患者への医療費助成は2015年に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)によって法制化されました。医療費助成の対象となる指定難病がそれまでの56疾患から331疾患に広がりました。患者さんの自己負担が2割になり負担限度額が設けられます。近年の医療制度改善として非常に大きなものでした。
 一方で、軽症と認定された患者が原則として助成から外れ、助成対象者も負担限度額が引き上げられるなどの問題を抱え込むことになりました。

 潰瘍性大腸炎の患者さんで軽症と認定され助成から外れた後に重症化し、下痢や血便、発熱などで入院した話などが寄せられました。ひとたび重症化すると患者本人にはなかなか申請する余裕はありません。助成から外れている間は3割負担となり、医療費負担が急増してしまいます。
 難病の症状は軽重の波があり、難病法制定時の議論でも「そもそも難病に『軽症』という概念はない」との声も上がっていました。継続的に治療を受けることで症状を比較的軽く抑えていた人が、助成から外れたことで受診抑制し、結果として重症化してしまうことも懸念しています。

住江 軽症でも医療費が高額になる場合は助成対象になる制度があるはずですが…

 自治体によって患者に制度を案内してくれるところがあったり、まったく患者が調べなければならなかったり、対応に差があります。また医師の診断時に「軽症のため助成対象にならない」と言われ、申請そのものを諦めてしまうというケースも一定あるようです。

住江 自治体や医療現場への制度の周知も課題ですね。

 

治療法の研究阻む

 軽症者外しは難病の治療研究への影響も心配です。医療費助成の対象者は毎年の更新時に、症状や専門的な検査結果、重症度分類の基準となる直近6カ月で最も悪い状態などを記載した臨床調査個人票を提出します。これによって病状分析のための基礎情報が蓄積でき疾患ごとの患者数も把握され、難病の治療研究に生かされてきました。

住江 軽症とされ助成から外れた患者のデータが集まらなくなりますね。研究データとしては、軽症者がなぜ軽症で留まっているのかを知ることも重要な情報のはずです。

 おっしゃるとおりです。徐々に悪化していく難病の患者にとっては軽症の状態を安定して維持する方法が見つかることは、とても大切です。治療法改善につながる研究が阻まれるのではないかと危惧しています。
 国のほうでは、助成から外れた人も申請を続けてもらうことで調査・研究に協力できるといいますが、臨床調査個人票の文書料は自己負担です。その他、住民票や所得証明などを用意する負担もあります。医療費助成の対象になる見通しもないままその作業をできる人は多くないでしょう。
重症度分類は治療研究に生かし、医療費助成とは切り離すべきです。

住江 軽症者外しによって矛盾が噴出していますね。難病法は施行後5年以内を目処に必要な見直しを講ずることになっています。軽症者外しや臨床調査個人票の文書料の問題を焦点に押し上げていく必要がありますね。

 

負担増は難病患者 追い討ち

住江 国は今、75歳以上の自己負担2割化や薬剤自己負担の引き上げを進めようとしています。助成から外れた人の追い討ちになってしまいます。保団連では「ストップ患者負担増」の取り組みとして請願署名などに力をいれています。

 難病は希少疾患のため情報が知られていなかったり、診断が難しく、多くの患者が指定難病の診断がつくまでにたくさんの医療機関を巡ります。このときの医療費負担はかなり大きくなります。これ以上の負担増を受け入れられないというのは、難病患者団体としても共通の思いです。「健康で文化的な最低限度の生活」は憲法でも保障されているはずです。

住江 より良い医療・社会保障を実現するため、共に頑張りましょう。

以上