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医師増員と診療報酬引き上げ欠かせない―医師の働き方改革
ドクターズ・デモがシンポジウム 医師、病院団体らで課題共有


全国保険医新聞2018年11月15日号より)

 

シンポジウムで発言する保団連の竹田理事

 

 「過労死ライン」を超えるような長時間労働の是正などを柱とした医師の働き方改革について、政府は来年3月までに議論を取りまとめる方針だ。全国保険医団体連合会(保団連)も参加するドクターズ・デモンストレーションは10月27日、東京都内で医師の働き方改革をテーマにシンポジウムを開催。保団連、全国医師ユニオン、全国自治体病院協議会、全日本病院協会の代表らが医師の働き方改革の課題を議論した。絶対的な医師不足の中、地域医療を守り過酷労働を改善するには医師増員と診療報酬の引き上げが欠かせないことが共有された

 

会場の参加者はうなずいたりメモを取ったりしながら聞き入った

 

 時間外労働の上限規制などを柱とした医師の働き方改革を巡り、医療界からは、「地域医療の継続性」と「医師の健康への配慮」が両立する対策を求める意見が出されている。
 医師、医学生ら約70人が集まったシンポジウムで、全国医師ユニオン代表の植山直人氏は、「『過労死ライン』を超える医師の働き方は医療過誤を誘発する。医療安全を確保する上でも改善は待ったなし」と力を込めた。
 全国自治体病院協議会副会長の原義人氏は、全国の自治体病院から、「医師偏在の解決が先送りされたまま時間外労働の上限規制となれば地域医療の崩壊を招く」との声が多数寄せられていると紹介した。
 全日本病院協会副会長の美原盤氏は全日病会員調査結果を基に、「救急医療の維持には医師数増が絶対に必要」と述べ、地域・病院は体制の確保に務めているが、そのためには診療報酬の引き上げが不可欠だと訴えた。
 保団連の竹田智雄理事は、「開業医も勤務医も過酷な労働環境にある。公立・民間を問わず絶対的な医師不足が解消されなければ、偏在などの問題解決とはならない。救急閉鎖など医療提供を崩壊させないためにも、必要医師数の計画的な確保と診療報酬の引き上げが重要」と訴えた。

 

保団連、全自病協、全日病、医師ユニオンが発言
「医療の質落とさず環境改善 最大の課題」

 医師の働き方改革をテーマにしたドクターズ・デモンストレーションのシンポジウムでの各パネリストの発言を紹介する(発言順)。

 

計画的な医師増員が必要 ― 全国医師ユニオン 植山直人 代表

医師ユニオン・植山直人代表

 全国医師ユニオン代表の植山直人氏は、全国医師ユニオンが実施した「勤務医実態調査2017」の結果を示し勤務医の過酷労働の改善を訴えた。同調査では、1カ月平均の時間外労働について救急で94時間、産婦人科で83時間となり、1割の医師が「1カ月休みなし」と回答している。
 植山氏は、OECD平均より日本の医師数が少ないことが過酷労働の根本原因と強調。「50歳を過ぎても週の労働時間が60時間という過労死ラインで勤務している日本はEU諸国に比べて異常だ」と指摘し勤務環境の是正を求めた。
 また植山氏は、同調査では、8割の医師が「交代制勤務はない」と回答し、8割の医師が「当直明けは通常勤務」と回答しており、7割の医師が「当直明けに医療ミスが増える」と回答していることを紹介。パイロットやトラック運転手には、事故防止のため労働時間の上限規制が課されていることに触れ、医療過誤防止のためにも「時間外労働の上限規制は必要」と訴えた。
 政府が進める医師の働き方改革について植山氏は、医師不足のまま労働時間規制が行われれば地域医療は崩壊すると懸念を示し、政府の医師数抑制策をあらため、計画的な医師増員が必要と訴えた。

 

偏在解消なしで充足しない
全国自治体病院協議会 原 義人 副会長

全自病協 原副会長

 全国自治体病院協議会副会長の原義人氏は、地域医療を支える自治体病院の立場から、政府の働き方改革、医師偏在対策について発言した。
 自治体病院は僻地、災害、救急、周産期の医療を提供し地域医療で役割を発揮してきた。しかし全国の市町村の8割が地方であるにも関わらず。そこにいる医師数は全体の34%に留まっており、都市部への医師の集中が地域医療存続を困難にしている実態を紹介。「医師偏在是正の抜本強化が必要」と訴えた。
 また、マクロで医師数は充足しているとした厚労省の医師需給見通しについて、「医師偏在が解消されない限り医師数が充足しているとは言えない」と批判した。
 原氏は、医師の働き方改革に関して、厚労省に医師の応召義務の解釈、医師の労働時間と自己研鑽の切り分け、宿日直許可基準の見直しなどを全自病協として要望すると表明。会員の自治体病院から、「医師の地域偏在、診療科偏在対策が先送りされたまま時間外労働規制が適用されれば地域医療の縮小等による地域崩壊を招く可能性がある」との声が多く出されたことが紹介された。

 

約半数が救急維持できない
全日本病院協会 美原 盤 副会長

全日病・美原副会長

 全日本病院協会副会長の美原盤氏は、「医師の働き方改革」による救急医療への影響について、全日病が4月に実施した会員アンケートを報告。医師の負担軽減には、「業務量を減らす」「効率化する」「人を増やす」のいずれかが必要と指摘し、特に「救急医療は医師増員なしに維持できないことが明らかとなった」と訴えた。
 全日病の調査では、約半数の病院が「医師の増員なしで救急体制を維持できない」と答え、常勤医師数や病床規模が大きな病院でさえ「救急維持は困難」と回答している。勤務時間の上限規制が適用された場合、「外来診療の縮小」や「救急診療の制限・とりやめ」を検討するとの回答も多かった。
 美原氏は、自院での医師の負担軽減の取り組みも紹介。当直体制の増員や事務作業補助者の配置、看護師へ一部業務の移管を実施した。結果、医師の労働環境を改善し、同時に救急搬入患者を増加させることができたが、人件費など支出が増加し、「黒字だった病院経営は赤字に転落した」と語った。
 最後に美原氏は、「働き方改革は医療の質を高めるが、医師増員が絶対必要だ。同時に診療報酬引き上げなしには経営が維持できない」と強調した。

 

開業医、勤務医とも改善急務
全国保険医団体連合会 竹田智雄 理事

保団連・竹田理事

 保団連の竹田智雄理事は、「働き方改革の最大の課題は、医療の質を落とさずに、医師の過酷な勤務環境を改善することだ。医師の働き方を改善してこそ医療安全が担保される」と強調した。
 保団連が実施した2008年開業医実態調査を基に、開業医の働き方は、月に80時間以上の時間外労働がある「過労死ライン」水準のものだと紹介。政府が急性期病床を削減し在宅医療への誘導を進める中、開業医も在宅患者の24時間応が求められ、働く環境は過酷だと強調した。病診連携などを地域の努力にゆだねるのも限界があると指摘した。
 竹田理事はその上で、「開業医、勤務医の過酷な勤務環境改善は急務だ。公立・民間を問わず医師不足を解消し救急閉鎖など医療崩壊を防がなければならない。必要医師数が確保されるまで計画的な医師養成が重要だ」と指摘した。また、医療機関が経営を維持するために人件費を抑えざるを得ない実態にも触れながら、「診療報酬の拡充は欠かせない」と話し、「これは医療界共通の願いだ」と力を込めた。

以上