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水が危ない 各地で進む水道事業民営化
医療への影響は甚大


全国保険医新聞2019年3月15日号より)

 

 水道事業の民営化を促すため、水道法が昨年改正がされた。公的サービスの市場開放を進める安倍政権の「成長戦略」の一環だ。営利目的の民間企業が水道事業を担えば、水道料金の高騰やコスト削減による水質低下などが懸念される。手術や医療機器の洗浄など安全な水の確保が不可欠な医療機関への影響は甚大だ。民営化は各自治体に委ねられている。民営化が進む宮城県と静岡県浜松市の会員に、問題点や地域の取り組みを聞いた。

 

安全な水で医療成り立つ

理事・宮城協会副理事長 杉目博厚

 昨年の水道法改正を受け、宮城県は上下水道、工業用水を民営化しようとしている。
「社会的共通資本」・「公共の福祉」である水。「命と健康」に直接関わる水。「水は人権」で、全ての人への安全で安定した供給が必要だ。たとえ不採算でも維持すべき水道事業は「公」が担うべきで、採算性を重視する民間企業が担うべきではない。 
 コスト削減による水質低下や過疎地など不採算地域への供給、料金の高騰、災害発生時の迅速な対応の可否や応援体制の問題など、民営化の不安要素は多岐にわたる。
 医療機関への影響は甚大だ。手術や機器の洗浄、歯科医療、血液透析など、医療においても水は不可欠で、水質の安全性の担保の上に成り立っている。料金の高騰も大量に水を使用する医療機関には死活問題だ。
 宮城協会は2月に民営化反対の談話を発表。県会議員との懇談も予定しており、この問題を重点課題として運動を進めることとしている。重要なのは水道民営化が統一地方選の大きな争点であることだ。7月の参院選でも、水道法を改正した国政のあり方が問われる。

 

市民の声で方針転換

理事・静岡協会理事長 聞間 元

 静岡県浜松市ではすでに昨年4月から、下水道事業の一部を民間企業に運営委託する民営化を導入している。昨年12月の水道法改正後、現市長は全国一番乗りで水道事業の運営権を民間企業に売却するコンセッション方式を水道事業に導入したいと表明した。
 浜松市の上水道は主に天竜川水系から供給されており美味しい水と市民の評判は良い。事業自体も黒字で健全経営だ。
 市民からは「命の水はみんなの財産、大企業に売らないで」の声が上がり、「水道民営化を考える市民ネットワーク」が結成され賛同が広がっている。短期間に署名活動や講演会、映画会が取り組まれ、1月早々には「命の水を守る全国の集い・浜松」も開催された。
 これらの動きを受けて4月の市長選挙に立候補する保守系の若手市議が、水道民営化反対を掲げる事態となった。慌てた現市長は1月末になって「市民の理解が得られるまで無期延期」を表明。市民の声が民営化の動きを食い止めている。

 

 国際ジャーナリストの堤未果氏(写真)は、水道事業の民営化等は、日本の公共資産に多国籍企業が参入する下地作りだと指摘する。2月8日の「TPPプラスを許さない!全国共同行動」主催のシンポジウムでの堤氏の講演概要を紹介する。

多国籍企業参入の下地づくり

国際ジャーナリスト 堤 未果氏

 この2年ほどの間に、水道法や種子法、漁業法など日本の公共資産を守るためのさまざまな法律が廃止・改正されています。水、米、海、農地…日本人が誇ってきた貴重な財産が民間に売り渡されていく問題点を、昨年、『日本が売られる』という1冊の本にまとめました。これらの法改正は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)、環太平洋経済連携(TPP)等を視野に入れ、多国籍企業の参入を進めるための国内の下地をつくるという一つの大きな流れのなかにあり、バラバラの点ではなく全てつながっていることに注意しなければなりません。


競争生まれず料金は企業の言いなり

 昨年の水道法改正は、民間企業が水道事業の運営権を持つことができる「コンセッション方式」の導入を推進する内容でした。この方式の問題点は、▽水道は一地域一企業の独占事業のため、企業間の競争が生まれず、従って水道料金の値上げなどを企業から提示されても自治体側は断れない▽企業の最大の目的は収益最大化。この副作用は平時でなく「有事」に出ます。災害時の水道管復旧や過疎地での事業継続など、採算度外視でも公益のために実施する自治体と違い、不採算部門は切り捨てられる可能性が高いからです。自然災害大国日本が何故コンセッション方式を絶対にやってはいけないか、去年一年に起きた多数の災害をふりかえるだけでも、想像がつくでしょう。
 ただし、「コンセッション方式の導入」を決定するのはあくまでも自治体の判断に委ねられています。地域で反対の声を集め、地方議会の中に反対する議員を増やしていけば止められるのです。こうした問題に対する一般の関心が広がらず無力感を感じるという声もありますが、がっかりすることはありません。住んでいる地域や、自分の周りの人たちにまずは話してみてください。必ず変わっていきますから。
 米国では、去年学校の用務員をしていた男性が、大手農薬メーカー「モンサント社」のグリホサート系除草剤でがんを発症したとして、末期症状でも裁判を起こし、勝訴しました。
 社会の変化は、目に見えないところでじわじわ広がり、ある日突然にやってきます。子供達に健やかで幸福な社会を残したいという思いを、決して捨ててはなりません。みなさん一緒に頑張りましょう。

以上