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2019年参議院選挙 識者に聞く                   

老後生活直撃の消費税 ― 社会保障充実の政治へ転換を

立命館大学特任教授 唐鎌 直義
全国保険医新聞2019年7月5日号より)

 

 老後の生活費は年金だけでは2000万円不足するとして貯蓄や投資を呼び掛けた金融庁報告書の“炎上”は記憶に新しい。老後生活の不安定さが浮き彫りになったが、不安は年金だけではない。10月に予定される消費税増税が高齢者の生活に与える影響も深刻だ。立命館大学特任教授の唐鎌直義氏に寄稿してもらった。

 

立命館大学特任教授
唐鎌 直義
からかま なおよし
中央大学大学院経済学研究科博士後期課程満期退学。長野大学、大正大学、専修大学を経て現在立命館大学産業社会学部特任教授。専門は社会保障・国民生活研究。

高齢者・低所得者ほど高い消費税負担率

 昨年6月、本紙に「社会保障削減で高齢者の貧困加速―人が犠牲の財政 本末転倒」(18年6月25日号)という原稿を書いた。高齢者の貧困の現状と原因に関してはこちらをお読みいただくことにして、今回は前稿で言及できなかった「消費増税が高齢者の暮らしを直撃する深刻な影響」について取り上げたい。総務省『家計調査年報』から、消費税率5%時の2013年と8%時の17年を比較してみる(表は17年のデータのみを掲載)。
 高齢単身無職世帯では、安倍政権下で年金削減政策が推し進められた結果、平均年収が13年の147万円から17年の140万円に下がった(これは実質的生活保護基準よりも20万円低い)。消費税額は税率アップによって13年の7万4,000円余から17年の11万5,000円余へ、年間4万円余の負担増となった。高齢単身世帯の平均年収に対する消費税負担率は8.23%に達している。8%を超えてしまう理由は、年収140万円では必要な生活費をカバーできないので、わずかな貯金を取り崩したり借金(ローン返済を含む)をしたりして、年収を上回る消費をしているためである。

 高齢夫婦無職世帯では、平均年収は13年の252万円から17年の251万円へと大きな変化は見られなかった。年金収入は下がったが、配偶者の稼働収入増等によりカバーされたからである。年収251万円は、高齢夫婦世帯の実質的生活保護基準を25万円上回っている。消費税は13年の13万円から17年の19万6,000円へ、6万5,000円の負担増となった。消費税率は7.83%に達している。8%を超えていないから消費額が年収を超えていないという訳ではない。消費税制には家賃や保健医療サービスなどの非課税費目があるからである。高齢夫婦世帯も貯金を取り崩して消費に当てている。
 参考までに、勤労者世帯の第]10分位階層(最も所得の高い上位10%の階層、17年の平均世帯年収1418万円)の消費税負担率を推計すると、2.95%に過ぎない。高所得者ほど稼得した収入の大半を貯蓄に回し、消費する割合が小さくなるからである。これに対して、勤労者世帯第T10分位階層(最も所得の低い下位10%の階層、平均世帯年収298万円)の消費税負担率は5.51%である。年収298万円でも節約して貯蓄に励んでいる状況が窺える。しかし、これでは個人消費が一向に上向かず、景気の低迷が続くのは当然である。上記からうかがえるように、本質的に消費税は富裕層優遇の税制である。一律8%負担は、消費税がその逆進性を覆い隠す仮面の役割を果たしている。
 高齢者の負担は消費税に限られない。直接税(所得税と地方住民税)も社会保険料(市町村国保または後期高齢医療と介護保険の保険料)も負担している。これらを合算した公租公課負担率を見ると(表中の計の欄)、高齢単身世帯で19.04%、高齢夫婦世帯で21.31%、勤労者第T10分位で19.75%、同第]10分位で22.18%となる。年収140万円の高齢単身世帯が19%の負担をし、年収251万円の高齢夫婦世帯が21%の負担をし、年収1418万円の第]10分位が22%の負担をしている。ほぼ同率の公租公課負担といってよい。これで民主主義国家の税制と言えるのだろうか。こうした負担率の均一化をもたらしている源が一般消費税の逆進性にある。
 消費税率が10%に引き上げられたと仮定して、2017年のデータを元に同様の推計を行ってみる(表中の最右欄参照)。8%時以上に公租公課負担の均一化が進行し、高齢夫婦世帯に至っては勤労者世帯の所得最上位層(第]10分位)の負担率を上回っている。これでは戦前の寄生地主制の暗黒時代に戻るようなものである。こうした民主主義が否定された社会の創出を、安倍首相は「美しい国・日本」と考えているのではないか。

以上