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「100年に一度」大規模浸水
「復興とげるまでがんばる」「患者さんが待っている」

全国保険医新聞2019年11月5日号より)

台風19号による大雨で氾濫(はんらん)した千曲川。中央左はこわれた堤防。13日、長野市。(共同)

 

 長野市によれば台風19号による浸水規模は100年に一度程度の降雨を想定して作ったハザードマップの想定とほぼ一致するという。停電、断水などによって休診を余儀なくされる医療機関が相次ぎ、浸水被害で診療再開が見通せないほどのダメージを受けた医療機関もある。保団連と長野協会が会員の被災状況の把握と激励のため訪問した。

 

長野協会との懇談の様子。長野協会の宮沢会長(左列手前から3人目)が被害状況を説明し、保団連の住江会長(右列奧)と杉山理事(右列手前)が地域医療の復興への支援を表明した
水没したカルテや問診票が積み上げられたタカミ歯科クリニックの診察室
水没し破損した機器が取り去られたレントゲン室。停電中で明かりを手に説明する村上氏(右2人目)
乾き固まった泥が手つかずなままの受付カウンター
消費増税は被災者の命に関わると憤る島谷氏(右)

 千曲川の決壊地点から流れに沿って北へ約3キロ。低地の豊野地区ではほとんどの建物の一階部分が水没し、3メートル以上浸水したところも。台風から一週間、泥水は引いたが歩道や駐車場は薄い土をかぶり、車道を車が通るたび砂煙が立つ。マスクをつけたボランティアが住居から泥まみれの家具を運び出す姿や流れついたゴミなどが積み上げられた一角がいまだ目立った。

 

1周年、目前に

 この地区で昨年11月に開業したばかりのむらかみ整形外科も床上約1メートル70センチ水に浸かった。
「開業1周年を祝おうとしていた矢先だった。今後のことはなかなか考えられない」。村上博則院長は片付けの手を止めて訪問を笑顔で迎えてくれたが、リハビリ機器やレントゲンなどほぼ全ての医療機器を破棄しなければならず、浸水した電子カルテやレセプトデータ復旧、収入源の確保など対応が山積している。話をしながら、頭を抱え言葉を途切れさせた。
 患者のことも気がかり、と話す。「データが失われ連絡のしようもない。避難所暮らしで不活発になり腰や膝の痛みが悪化してなければいいが」と顔を曇らせた。
 「地域の患者さんが必ず待っている。復興にむけて保団連、協会として全力で支援していく」と保団連の住江会長らが激励すると、「とにかく復興を遂げるまでがんばりたい」と話した。

 

この場所で復興したい

 むらかみ整形外科から西に徒歩で約10分弱の距離にあるタカミ歯科クリニックは、併設する自宅もろとも一階天井まで水没した。治療で患者を座らせるチェアユニットや歯科技工関係機器など全機器が水に浸かった。
 山田文高院長は「焦るばかりで、(被災後の対応は)まったく進まない」と憔悴しきった様子で建物内を家族と片付けていた。全ての機材が運び出された診察室には泥水に浸ったカルテや問診票が積み上げられた。「大事な患者情報。何とか活用したい」と話す。災害などでカルテなどを失った場合、レセプト返還を求めることもできる。保団連の杉山理事は「東日本大震災で津波被害から復興した医療機関を見てきた。きっと立ち直れる」と語りかけた。長野協会の宮沢会長も「いつでも協会を頼ってほしい」と訴えた。山田院長は、「患者さんも片付けの手伝いや様子見に来てくれる。どうにかこの場所で復興したい」と前を向いた。

 

被災時に消費増税とんでもない

 千曲川の決壊地点から20キロ以上上流にある千曲市の島谷医院も床上30センチの浸水被害にあった。千曲川に流れ込む支流が溢れ医院を含む周辺地区が冠水した。
 島谷医院では超音波検査機や胃カメラが浸水し破損した。水が引いても胃腸科・消化器科として従前通りの診療はできず、19日からようやく処方箋の対応を再開した。島谷茂樹院長は「患者さんから、予定していた検査はどうしよう、薬はもらえるかなど、問い合わせがたくさんあった」と振り返る。
 「まさか自分が被災するとは思ってもいなかった」と肩を落とした島谷院長は、「日本中が被災している時に消費税増税などとんでもない。むしろ廃止すべき。人の生死がかかっている」と話し、「国は復興にきちんと取り組むべき」と力を込めた。
 住江会長は「なんとしても復興をはたして、共に医療・社会保障を良くするために取り組んでほしい」と訴えた。

 

一日も早く

 長野市よりも千曲川下流になる県北部の飯山市でも、千曲川から越水した飯山城址の周辺などが1メートル以上浸水した。内山歯科には杉山理事と宮沢会長が訪問し、患者対応に追われる内山英樹院長に代わり歯科医師の幸子氏と面会。「飯山市の被害は報道が少なく心細かった。スタッフの手伝いもあり何とか片付いてきた」と話した。
 13日明け方から浸水し14日の午前中に水が引くまで外にも出られず、自宅に取り残された。1階機械室のコンプレッサーやパネルヒーターなどが被害に遭ったが、何とか代替機器の手配は済ませたという。「すでに診療は一部で再開しているが、一日も早く全面再開したい」と意気込んでいた。




 阿武隈川の水が溢れ冠水した丸森町の道路や周辺地帯(上、中)。丸森町内の歯科医院では60センチ浸水し、患者を座らせるチェア・ユニットなどが破損。診療再開できない状態だ。
 宮城・丸森町

埼玉・東松山市 東京・世田谷区
 都幾川の氾濫で浸水した東松山市の歯科医院。強風で看板も破損した。  多摩川近くの半地下階にあるオカムラ歯科医院は床から2メートル水没した(左上)。玉堤歯科も1メートル水没し、水が引いた後も流れ込んだ泥が至る所に残った(左右)。

以上