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生存権を後退させる
生活保護基準引き下げ 名古屋地裁判決の問題点

全国保険医新聞2020年8月25日号より)

 

 2013年から国が実施した生活保護基準の引き下げの取り消しを求めて29都道府県で争われている裁判で、6月25日、名古屋地裁は原告の請求を棄却した。一連の訴訟では全国初の判決となる。保団連は不当判決として抗議する声明を発出した。名古屋地裁の判決の問題を、裁判を支援している「全国生活と健康を守る会連合会」事務局長の西野武氏に寄稿してもらった。

 

 生活保護基準の大幅引き下げは、「健康で文化的な生活」を保障した憲法25条に反するとして、全国で1,000人以上が引き下げ処分の取り消しを求め裁判を闘っています。原告には多くの全生連の会員がいます。
 名古屋地裁が言い渡した判決は、原告の請求を棄却するという不当なものでした。
 憲法25条の「生存権」は、国民の権利であり、制度を後退させることは許されないとした私たちの主張に対し、判決は、憲法25条は、国政の運営指針であり、生活保護制度を後退させることを禁止しているのではないと国民の権利を否定し、基準引き下げを肯定しました。

 

生きるのがやっとの状況

 生活保護利用者は、食事、入浴、冠婚葬祭費等の支出をぎりぎりまで減らし、「生きるのがやっと」の状況です。原告の単身高齢者は「生活できるか不安でここ3年不眠症になり、精神科に通っている」「下着、靴下など消耗品が買えず、バザーでコート類50円で購入」「手術後、医師から栄養をとれと言われたが、カップラーメンが増えた」。母子世帯は「病院に行く回数を減らし、食事を3回から2回にして、友人との交際をなくした」「子どもが育ち盛りで食費の捻出が困難」。障害者は「もう節約するものがないが、食費、電気代をさらに削った」「両親の葬式にも行けない。人生そのものが檻にとじこめられた感じ」など、追い詰められた生活実態を訴えました。
 しかし判決は「1日3食とっている人が6〜7割以上いることや生活用品の保持などが認められる」として、「肉体的生存の維持でいい」と「憲法25条の健康で文化的な生活保障」から目を背けました。

 

厚労相、与党に無限定の裁量認める

 生活保護法第8条1項は、基準を決める裁量を厚生労働大臣に委任していますが、2項では要保護者の必要な事情(年齢、世帯、地域など)を十分に考慮するとしています。判決は法律の趣旨を無視し、「生活扶助基準の改定に当たっては、国の財政事情、国民の感情、政権与党の公約、他の政策等を広く考慮する必要がある」と、厚労大臣の無限定な裁量権や政権党の政治的引き下げを容認しています。保護基準引き下げの理由にされた「デフレ調整」「ゆがみ調整」についても、問題があるが大臣の裁量の範囲内としました。

 

コロナ禍でこそ

 全国の裁判関係者は、判決の翌日の6月26日、全国的な集会を開催し、「判決への怒りを、残りの裁判にぶつけよう」と、確認し合いました。
 新型コロナ感染症が全国で猛威を振るい、派遣切り、雇い止め、自営業者の収入減・廃業などが相次ぎ、多くの人が生活困難に直面しています。4月の生活保護申請数は、前年同月比で過去最大の伸び率となる25%増でした。6月15日の参議院決算委員会で、安倍首相は、「ためらわずに(生活保護を)申請してほしい。さまざまな機会を活用して国民に働き掛けていきたい」と明言しました。全生連は裁判勝利と結んで「生活保護は権利、積極的な利用を」と呼び掛ける運動を今後も大いに広げていきます。

以上

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