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困窮支援の現場から

今こそハウジング・ファースト

全国保険医新聞2020年10月15日号より)

 

 コロナ禍による失業や収入減少によって、暮らしが破綻する人が増えているが、これは賃金などの収入以外に生存を支える術がないことを意味している。浮き彫りになった社会保障の脆弱さや日本社会の目指すべき方向について、生活困窮者支援、反貧困の活動などに取り組む稲葉剛氏に連載で解説してもらう。

 

深刻なSOS

 「働いていた派遣が8月いっぱいで打ち切られました。仕事を探しているのですが、見つからず、貯金を崩して暮らしてましたが、携帯も止まり、色々と限界が来てしまっています」
 「コロナの影響もあり、仕事が少なくなってしまい、今は野宿したり、働いたりの繰り返しです。所持金もほとんどない状態なので、今後どうしたら良いかわかりません」
 首都圏を中心に30以上の生活困窮者の支援団体でつくるネットワーク「新型コロナ災害緊急アクション」で開設した相談メールフォームには、連日、深刻なSOSが寄せられている。相談者の多くは20代から40代であり、女性からの相談も少なくない。
 所持金が数十円、数百円しかないという相談者も多いことから、「緊急アクション」ではスタッフが相談者のいる場所まで駆け付けた上で、緊急の宿泊費や食費をお渡しするというアウトリーチ型の支援活動を展開している。

 

コロナ禍で支援ニーズ増す

 私が代表を務めている一般社団法人つくろい東京ファンドは、「緊急アクション」の相談支援に関わりながら、東京都内の空き家や空き室を活用した個室シェルターの整備に努めている。私たちは従前からハウジングファースト型の支援(安定した住まいの確保を最優先とする支援)に取り組んできたが、感染症の拡大を防止するという意味でも個室シェルターのニーズが高まったことを受け、この半年間で新たに30室以上のアパートの部屋を借り上げ、仕事と住まいを失った人々への住宅支援を強化している。
 シェルターの各室には、着の身着のままの状態の人がすぐに入居できるように、購入した家電製品と布団を搬入している。住まいを失う人の中には犬や猫などのペットと一緒に路頭に迷っている人もいるので、7月末には都内のペット可物件(ワンルーム2室)を借り上げて、ペットと一緒に泊まれるシェルターも開設した。以前から借り上げている25室も活用しながら、連日、行き場を失った10代から70代の男女を受け入れているが、整備が追いつかない状況だ。

 

国の対応鈍い

 民間の私たちがアウトリーチ型の支援や個室シェルターの整備に奔走しないといけないのは、行政の危機感が薄すぎるからだ。「緊急アクション」では、国に対して大規模な住宅支援の実施や貧困対策の拡充を求めてきたが、国の動きは鈍い。
 コロナ禍における生活困窮者支援の現場から見えてきた日本の社会保障制度の問題点について、6回シリーズで書いていくので、ご注目をお願いしたい。

筆者プロフィール・いなば つよし

 1969年広島生まれ。東京大学在学中から外国人労働者支援などに取り組む。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への支援を展開、14年まで理事長。現在、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大院客員教授。

以上

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