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コロナ差別を乗り越える

全国保険医新聞2020年10月25日号より)

 

正しい情報発信を現場から―教員・保護者対象に講演会を開催

富山大学小児科講師 種市尋宙氏インタビュー

 新型コロナウイルスに感染した患者への差別が、各地で問題となっている。富山大学小児科講師の種市尋宙氏(写真)は、感染した子どもに対する差別や偏見の対策に奔走し、「医療者の正確な情報発信が重要」と語る。話を聞いた。

 

 私は新型コロナウイルス感染症の重症患者の対応をする医療機関に勤務していますが、小児の重症例はほぼなく、患者家族等の話を聞いて、患者差別の対応にこそ力を入れる必要があると感じさせられています。
 地方において、新型コロナに感染した患者へのバッシングは深刻です。
 近隣の県では、感染した子どもがいじめにあい、転校したという事例を聞いています。また、患者が通っていた学校は、SNSで攻撃され、抗議の電話が殺到することもありました。富山県で最初に感染したとされている成人患者に対しては、実名や写真などがインターネットで公表され、実家への嫌がらせなどもあり、家族も被害に遭っていたようです。

 

報道姿勢巡り地元紙と懇談

 この要因の一つに、報道の姿勢があったと思います。地元紙は当初、最初の患者の属性やその後の感染の広がり方を、関係図を作成するなどして詳細に報道しました。県民には新型コロナウイルスへの恐怖心が植え付けられ、メディアがそれを煽る形になってしまい、結果として患者を排除する方向に向かったと思います。
 感染した高校生の学校名や性別、行動履歴などを1面で大きく公表した報道もありました。さすがに許されないと感じ、地元紙と懇談し、医学的見地からみても感染拡大の防止に寄与しない報道だと伝えました。幸い、相手方は真摯に受け止めてくれて、現在はそのような報道はありません。
 同時に、富山市教育委員会とも検討を重ね、感染者の学校名は公表しないという方針になりました。こうした情報は必要最低限の関係者が共有すれば十分で、広く報道する必要はありません。

 

「子どもは重症化しづらい」と説明

 休校期間中に新型コロナウイルスに感染したお子さんを持つご家族から「いじめを恐れ、転校を考えている」との相談を受けたことがありました。児童たちは転校したくないと言っていました。
 そこで、この感染症の正しい知識や、差別・偏見は許されないことを伝えようと、教員等を対象に講演会を開催しました。子どもは感染しても重症化しづらいこと、ウイルスの生存期間からみて、学校再開後にその子たちが原因で感染する危険はないことなどを伝えました。保護者向けの説明会も行いました。
 結果、周囲の理解を得て、児童らは問題なく復学することができました。現在も学校による見守りで、感染した他の児童にも問題は確認されていません。

 

根底にウイルスへの恐怖心

 患者に対する差別の根底には、このウイルスに関する恐怖心があると思います。ですから私たち医療者が、専門家として正しい知識を発信していくことが重要ではないでしょうか。
 たとえば、わが国では新型コロナウイルスに感染した子どもの重症化事例は非常に少なく、死亡者もいません。さらにインフルエンザなどと比較して子どもから大人(高齢者など)へ感染が拡大することははるかに少ない状況です。
 私は小児科医として、こうした情報を伝え、教師や教育委員会とともに子どもの日常を取り戻していく取り組みをしています。この積み重ねが人々の恐怖心をやわらげ、差別の対策にもなると考えています。

 

協会で啓発ポスター作成

静岡協会理事長 聞間 元

 静岡協会では、コロナ感染者への差別をやめようと呼び掛けるポスターを作成し、会員に配布する等している。聞間元理事長(写真)に、取り組みの内容を寄稿してもらった。

 静岡協会では、新型コロナ感染者への差別や嫌がらせを止めようという呼び掛けのポスターを県内の絵本作家のデザインで作成し、会員に配布しました。

静岡協会で作成したポスター

 新型コロナウイルス感染症の発生当初、県内の感染症指定医療機関ではダイヤモンドプリンセス号の感染患者の受け入れを始めていましたが、診療に当たる医療関係者を忌避する言動や行為は幸いにも問題にはなりませんでした。

 

「ウイルスより人が怖い」

 しかし、海外からの帰国者や首都圏から移動した県内居住者の陽性者が報道されるようになると、感染者やその家族、企業への嫌がらせ行為が急増し、SNS等ネット上だけでなく、直接的にも行われている実態が役員会でも話題になりました。
 さらに7月以降、県下都市部での多数のクラスター発生が知られると、SNS上の差別的攻撃的言動や嫌がらせによって「ウイルスより人が怖い」という被害者の声が報道されるようになりました。また県内にある東海地方唯一の元ハンセン病患者施設の元患者からも、「また同じ過ちを繰り返している」と憤る声も報道されました。私達医療者としては感染症患者へのこのような差別を座視してはならないと思います。
 県をはじめ自治体でもこうした差別行為をストップさせようという取り組みが本格化し、窓口に啓発用ポスターを掲示したり、動画を作成配信しています。協会では9月の理事会でポスター案が確認されて配布になりました。保団連としての全国的な取り組みを期待します。

 

感染への不安解消が必要

日本医労連書記長 森田 進氏インタビュー

 日本医労連の調査では、新型コロナウイルスに関して、医療従事者やその家族への差別的な対応が、8月には4月の2倍となっている。書記長の森田進氏(写真)に、背景として考えられることや差別解消に何が必要かを聞いた。

 

医療従事者への差別 4月の2倍に

 8月の医労連の新型コロナウイルスに関する緊急実態調査では、病院職員への差別的対応やハラスメントが「ある」と答えた医療機関が20.8%と、4月の調査の約2倍となり、大変驚きました。4月の9.9%でも驚き、政府に対策を国の責任で行うことを求めてきたところでした。
 差別の具体的な事例として、「保育園で子どもが別の場所に置かれていた」「保育園での預かり拒否」「美容室の予約を断られた」「子どもと遊んでいると近所の人から嫌味を言われる」などが寄せられました。
 医療従事者や家族への差別は、深刻で重大な人権問題です。保育園で子どもが差別を受けるなど、親にとっては本当に辛いことだと思います。また、コロナ対応で緊張感を持っている医療従事者が、医療機関の外でも差別にさらされていたら、リラックスできる場を失い、働き続ける意欲を失ってしまうでしょう。
 差別が増えた背景には、7月からの第2波で、第1波以上に感染者が拡大し、感染に対する恐怖や不安がさらに広がったことがあるのではと考えています。
 差別の解消には、こうした不安を取り除く努力が必要です。新型コロナの検査、治療、療養等についての正確な情報を提供するとともに、これらにかかる費用の全額公費負担を堅持して感染時の経済的不安をなくすこと、医療現場で個人防護具を十分に確保できるような財政措置、PCR検査を大幅に拡充し医療従事者にも定期的に行えるようにすることなどが必要だと思います。
 医労連は、これらを政府に引き続き要望していきます。

以上

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