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困窮支援の現場から

第2回 この冬を越せるのか

全国保険医新聞2020年11月15日号より)

 

 コロナ禍による失業や収入減少によって、暮らしが破綻する人が増えている。背景にある社会保障の脆弱さや、日本社会の目指すべき方向について、生活困窮者支援、反貧困の活動などに取り組む稲葉剛氏に連載で解説してもらう。(全6回毎月掲載)

 

住宅確保給付金 支給58倍に

 失業などの理由で収入が減少している人に賃貸住宅の家賃を支給する住居確保給付金(給付金)の申請件数が増加している。今年4月から8月までの5カ月間に全国の市区町村窓口で受け付けた申請件数は10万8,839件にのぼり、そのうち9万6,099件の支給が決定された。昨年度の支給決定件数は1年で3972件だったので、月ベースで比較すると実に約58倍に急増していることになる。
 この給付金の支給対象は当初、離職者のみであったが、コロナ禍でフリーランスや自営業の人が生活に困窮している状況を踏まえ、今年4月から休業等で収入が減少した人も対象に加えられた。この制度改善が申請件数の増加につながった面もあるが、あまりの急激な増加に、給付金の受付を担当する生活困窮者自立支援制度の窓口(困窮者支援窓口)で働く職員からは、悲鳴があがっている。

 

職員疲弊で「相談崩壊」も

 大阪弁護士会が、大阪府内の28の自治体の困窮者支援窓口で働く職員を対象に緊急に実施したアンケート調査では、「緊急事態宣言後、仕事を辞めようと思ったことがある」と答えた人が全体の43%、「職場で辞めた方がいる」と答えた人が23%もいる等、職員が疲弊している実態が明らかになった。過労により職員が精神的・肉体的に追い詰められ、「相談崩壊」とでも言うべき状況が起こりつつあるのだ。
 大阪弁護士会は今年9月、大阪府内の各自治体に対して困窮者支援窓口の業務を重要施策として位置づけた上で、職員を増員し、特に非正規職で働く職員の待遇を改善することを要望した。私もこの要望に賛同するものである。

 

給付金延長など 対策待ったなし

 この給付金の支給期間は原則3カ月で、それまでに家計が安定しない場合には最長9カ月まで延長できることになっている。NHKの調査によると、最初の3カ月で収入が回復せず、8月に延長をした人も全体の56%にのぼっており、経済活動が停滞する中、先の見通しを持てない人が増えていることがわかる。このままでは4月から制度を利用している人への支給は年内に終了してしまうことになる。
 私が最も心配するのは、この冬に給付金の支給が終了し、住まいを維持できなくなった多くの人が路頭に迷うという事態が生じることだ。私たちは厚労省に対して、支給期間の延長や相談員の増員等、この制度をさらに拡充することを要望している。都内各地のホームレス支援団体が実施する炊き出しに集まる人の数はすでに増加傾向にある。対策は待ったなしだ。

筆者プロフィール・いなば つよし

 1969年広島生まれ。東京大学在学中から外国人労働者支援などに取り組む。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への支援を展開、14年まで理事長。現在、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大院客員教授。

以上

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