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困窮支援の現場から

第3回 迫る年末の貧困危機

全国保険医新聞2020年12月15日号より)

 

 コロナ禍による失業や収入減少によって、暮らしが破綻する人が増えている。背景にある社会保障の脆弱さや、日本社会の目指すべき方向について、生活困窮者支援、反貧困の活動などに取り組む稲葉剛氏に連載で解説してもらう。(全6回毎月掲載)

 

炊き出し利用者 通常の1.6倍

 コロナ禍の第三波が日本列島を襲い、景気の低迷と雇用の悪化が長期化しつつある。東京・池袋で定期的に実施されているホームレス支援団体による炊き出しに集まる人の数は増加し続け、11月下旬には290人を超えた。これは通常時の1.6倍を超える人数である。
 いま、私たちが最も怖れているのは、これから到来する本格的な冬の時期に、多くの人々がホームレス化し、路上にあふれるという危機的状況が発生することだ。
 今冬の危機を回避するため、この間、私たちは国や東京都に対して、生活困窮者が住まいを失わないための支援策と住居を喪失してしまった人たちへの緊急対策の両方を要望してきた。その甲斐あって、厚生労働省は、最長9カ月に設定されていた住居確保給付金(家賃補助)の支給期間の3カ月延長を決め、東京都はこの年末年始にビジネスホテル1,000室を確保して、住居喪失者への緊急対策を実施すると発表した。いずれも私たちの要望に沿うものであり、この冬に路頭に迷う人を減らす効果があると期待している。

 

「支援打ち切られた」都の硬直対応も

 だが、都の緊急対策については不安も残る。今春の混乱を鮮明に覚えているからだ。
 今年4月、緊急事態宣言が発出され、ネットカフェに休業要請が行われた際にも、東京都は私たちの要望に応える形でビジネスホテルを活用した緊急宿泊支援を実施した。
 しかし、私たちのもとには「都の窓口に相談に行ったものの、都内に6カ月以上滞在していないので対象外であると言われて、ホテルに入れなかった」、「ホテルに宿泊していたが、途中で支援を打ち切られた」という相談が多数寄せられた。その背景には、現場を踏まえない都の硬直した対応や都と区市の間の連携不足があった。

コロナ禍の東京を駆ける
―緊急事態宣言下の困窮者
支援日記
●1,900円+税 岩波書店
●稲葉剛・
小林美穂子・和田靜香 編

 こうした問題が発覚するたび、私たちは都や各区市に抗議・申入れを行い、一つ一つ対応を改善させていったが、それはまるでもぐら叩きのような状況であった。
 宣伝になるが、この時期の私たちの活動の記録はこのたび書籍化されたので、関心のある方はご一読いただきたい。

 

支援情報周知など実効性ある対策を

 年末年始の緊急対策を今春の二の舞にさせてはならない。その思いで私たちは11月30日、東京都に対して緊急対策に関する要望書を提出した。
 具体的には、▽支援策に関する情報が行きわたるように早期から積極的な広報を行うこと▽年末年始の期間も都内の複数の箇所で受付を行うこと▽現に住まいを失っているか、失う危険が極めて高いという点以外の支援の適用条件を設けず、相談者が確実に宿泊場所を確保できるようにすること▽一時的な宿泊支援だけでなく、利用者が安定した住まいと暮らしを回復できるように継続した支援を実施すること―等を都に求めている。
 形だけの対策ではなく、住まいを失った人たちの目線に立った実効性のある対策が実施されるよう、ぜひ多くの方のご注目をお願いしたい。

筆者プロフィール・いなば つよし

 1969年広島生まれ。東京大学在学中から外国人労働者支援などに取り組む。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への支援を展開、14年まで理事長。現在、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、立教大院客員教授。

以上

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