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保団連夏季セミナー 武村副会長が基調提案
医療費抑制策の転換を 医療崩壊もたらした新自由主義

全国保険医新聞2021年7月15日号より)

 

基調提案する武村副会長

 夏季セミナーでは、武村義人副会長が、「今こそ医療費抑制策の転換を」をテーマに基調提案した。新型コロナウイルスの感染拡大で露呈した日本の医療危機は、政府の長年の医療費抑制策が原因とし、その背景には大企業優遇で国民に負担を押し付ける新自由主義があると指摘。今こそ医療・社会保障の拡充が求められていると強調した。

 

 武村副会長は冒頭、新型コロナウイルスの感染拡大で生じた日本の医療の危機は、コロナ以前からの政府の医療費抑制策が原因と述べた。
 小泉構造改革以降、財界や財務省は「効率一辺倒」の医療提供体制を現場に求めてきた。2000年と19年を比較すると、感染症病床は21%、一般病床も13%減少している。さらにコロナ禍での受診抑制や医業経費増加などで、医療機関はかつてない困難に直面した。20年の4月から9月の医療費は19年に比べて1兆円以上のマイナスとなり、病院団体の調査によれば約4割の病院が冬季の賞与を減額支給した。

 

皆保険守るために減収補填が必要

 医療機関の経営危機に対して武村副会長は、国に減収補填を求めていこうと呼び掛け、その根拠として医療の「公益性」、「非営利性」をあげた。
 日本では、社会保障における国の責務を明記した憲法25条2項により国に医療提供が義務付けられていることから、医療は「公益性」を有する。
 さらに医療機関経営では利益の配当は禁止され、診療報酬は公定価格で範囲や内容なども国が定めるため、利益追求目的の自由な価格設定ができないなど、徹底的な非営利性も求められる。武村副会長は、日常診療を行う医療機関が経営危機に陥った際の減収補填は、国民皆保険制度を守るために必要だと強調した。

 

日本の医師数10万人不足

 さらに武村副会長は、一部マスコミにみられる「民間医療機関や開業医がコロナ対応に非協力的」などの主張を、医療現場の実態を踏まえないものと指摘。
 民間病院は公立・公的病院に比べて病床規模が小さくコロナ患者受け入れが困難である中、受け入れに奮闘している。たとえば東京ではコロナ患者受け入れ病院の65%が民間である。
 そもそも日本の医師数はOECD平均で10万人も少なく、病床数当たりの看護師数も独仏の約半分、米国の4分の1であり、マンパワー不足が明らかである。さらに政府の進める保健所統廃合や病床削減がコロナ対応を困難にしてきた。

 

大企業は利益に応じ社会的責任を

 武村副会長は、こうした医療費抑制の背景には、大企業を優遇し、格差と貧国に苦しむ国民には自己責任を押し付ける新自由主義があると指摘。医療費の自己負担増や年金の給付削減、生活保護の改悪など、医療・社会保障の連続改悪で国民生活が困窮する一方、政府は法人税の大幅減税や労働者派遣の緩和などで、大企業が利益を最大化できるような政策を続けてきた。一例として、1989年の消費税導入以来の消費税収396兆円に対して、法人税減税額は298兆円に上り、国民から徴収した消費税が法人税減税の穴埋めに使われている。
 大企業は利益に応じた社会的責任を果たすべきと武村副会長は強調。大企業の負担を増やして社会保障を充実させ、企業に正社員の雇用を増やすよう義務付ければ、雇用が改善し、格差も縮小し、ひいては社会の安定化につながるとして、今こそ医療、社会保障の拡充が求められていると結んだ。


 7月3、4日に都内で開催された夏季セミナーには、全国からウェブ参加も含めて400人以上が参加した。
 開会あいさつで住江憲勇会長は、「2年ぶりの夏季セミナーとなった。来たるべき総選挙を保険医の要求実現の好機として生かすためにも、学習、討論を大いに深めてほしい」と呼び掛けた。初日は武村義人副会長の基調提案に続き、ジャーナリストの青木理氏が記念講演した。
 2日目は、財政・金融政策、改憲問題、医療・診療報酬、歯科医療をテーマに講座を開催。午後は、新型コロナ感染拡大と地域医療のあり方をテーマにシンポジウムを開催した。

以上

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