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保団連夏季セミナー 各講座の概要(1)

全国保険医新聞2021年9月25日号より)

 

夏季セミナー講座のもよう

 保団連は7月3、4日に第50回保団連夏季セミナーをウェブ併用で開催し、全国から医師・歯科医師434人が参加した。各講座の概要を報告する。講座3・4の概要はこちら。

 

保団連夏季セミナー・講座1―コロナ禍を踏まえた財政・金融政策

静岡大学人文社会科学部教授 鳥畑与一

鳥畑氏

 講座1では、「コロナ収束後の金融財政政策を考える」をテーマに静岡大学人文社会科学部教授の鳥畑与一教授が講演した。
 鳥畑氏は日本の現状として、経済の金融化と言われるようにマネーがマネーを生み出す投機的資本蓄積が進んでいると指摘。利益がファンドや富裕層に集中し、巨大な貧困や格差拡大、実体経済の停滞を生み出し、「新自由主義政策の限界」が露呈したと強調した。
 金融政策では大胆な金融緩和によるデフレ脱却を主張するリフレ理論による金融緩和、つまり非伝統的金融政策が常態化していることについて「債務漬けによる需要喚起がなされている」と指摘した。
 財政政策では財政ファイナンスでの需要創出を企んだが、「富の偏在による需要消失」を財政金融政策で穴埋めする政策が常態化する中で、今回のコロナパンデミックが日本経済を襲ったと分析した。
 2021年5月の実績を見ると、12年末から長期国債が416兆円増加した。国債残高増を上回る日銀の国債購入で、保有比率が急上昇している。マネタリーベース(MB)も513兆円増加し、18年のGDP名目549兆円を大きく超える水準となった。
 鳥畑氏は、「これだけ日銀信用を膨張させ、年金資金まで投入した成果なるものが、投じたコストに見合うものとは言えない」と批判した。

富の偏在生み出す経済構造を軽視

 コロナ禍で積極的な財政支出を主張するMMT(現代貨幣理論)が注目されている。鳥畑氏は、MMTが、完全雇用を追求し、インフレは増税と政府支出の削減で抑制すると主張している点について、インフレによる国民への経済的被害を懸念するとともに、富の偏在や貧困格差を生み出してきた経済構造の改革を軽視していると批判した。さらに、従来の金融・財政緩和政策の問題点を省みず、MMTを評価することは危険であると指摘し、不況の根本原因を分析し対処することが重要と強調した。
 新自由主義の経済・財政政策による貧困格差によって生じた需要喪失を赤字財政によって際限なく穴埋めしても貧困格差は根本的に是正されない点も強調した。

格差是正する税制改正に向けて

  鳥畑氏は、アベノミクスの行き詰まりによって、異次元の金融緩和も限界にきている。国家債務が巨大化し、新自由主義の財政均衡主義への批判が高まっている。また財政再建を理由とした消費税増税が経済不況の発端であり、コロナ禍が追い打ちを掛けたと経済の現状を分析した。
 こうした状況を打開し、格差是正を実現するため、応能負担原則で所得再分配機能を強化する税制の確立が重要と指摘した。その上で、資産税として大企業の内部留保234兆円に20%の課税で47兆円が実現できると例示した。
 最後に鳥畑氏は、富の集中(貧困格差拡大)を生み出してきた経済構造を温存したまま赤字財政で需要を創造しても、際限ない財政支出が必要になると指摘し、利益の株主集中からステークホルダーに適正に還元される仕組みづくり、最低賃金引き上げ、マイナス金利からの脱却など政策転換に向けて、政治を転換することが必要であることを強調した。
(理事 太田志朗)

 

保団連夏季セミナー・講座2―改憲を許さず憲法が生きる社会

東京慈恵会医科大学教授 小澤隆一

小澤氏

 講座2では、小澤隆一氏が「改憲を許さず憲法が生きる社会」をテーマに講演した。
 小澤氏は、冒頭に菅義偉首相が日本学術会議会員の任命を拒否した問題に言及した。
 小澤氏は、任命拒否された6人の1人である。12年ほど前、日本学術会議の連携会員として「核のゴミ」問題で、政治と独立した学術の立場から「提言」作成に関わった。「政府には耳が痛いかもしれないが、これこそが学術会議が担っている貴重な役割である」「学術会議法に基づけば、実質的選定・罷免権は学術会議にあり、首相にないことははっきりしている」と述べ、首相による任命拒否の問題点を指摘した。
 また、学問の自由がない明治憲法下でアジア太平洋戦争に突入した苦い教訓を踏まえ、日本国憲法は23条で学問の自由を保障してきた歴史的経緯を振り返った。
 任命を拒否された6人は、拒否理由について自己情報開示請求を行ったが、「文書は保有していない、あるともないとも言えない、人事情報だから開示しない」と国が回答したことを紹介し、この問題について声を上げてほしいと参加者に訴えた。

コロナ禍では軍事費削減を

 安倍政権は一貫して改憲策動を続ける中、市民と野党の結束でかなわず、昨年9月に退陣した。小澤氏は、「安倍政治の継承を掲げた菅政権は、派手さはないが反憲法的既成事実を積み上げるという点で危険性は劣らない」と指摘した。
 日米関係では、「インド太平洋地域を世界の平和と安全の礎と位置づけ、中国に対する米国の戦争に日本が加担する危険性をかつてなく増大させている。中国の動きは国際法違反であるが、憲法9条の精神の下、国際法の道理での外交交渉で解決を図るべき」と述べた。
 また、韓国は軍事費を削減し全世帯への「緊急災害支援金」の財源とする一方で、日本政府が、5兆円を超える防衛費を予算化し「敵基地攻撃」が可能な長距離巡行ミサイル開発など軍拡を継続していることを批判した。
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を保障する」と明記した憲法25条がコロナ禍でその重要性を増している。健康権は日本も批准している国際人権規約にさらに具体的に規定され、「伝染病、その他の疾病の予防、治療」が掲げられている。小澤氏はコロナ感染拡大下で健康を確保する権利がないがしろにされていると述べ医療を確保していこうと訴えた。

野党共闘で改憲阻止を

 小澤氏は、自民党の改憲案の危険性、特に「緊急事態条項」にも触れた。最後に「今こそ菅政権の改憲策動に声をあげるとき」と強調した。4月25日の3つの国政選挙を例に挙げ、野党共闘の成果の上に立って、来る総選挙で市民と野党の力で改憲反対の勢力を大きくし、改憲を断念に追い込み、憲法を生かす政治への転換を実現しようと結んだ。
(理事 中川武夫)

以上

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