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保団連夏季セミナー 各講座の概要(2)

全国保険医新聞2021年10月5日号より)

 

 保団連は7月3、4日に第50回保団連夏季セミナーをウェブ併用で開催し、全国から医師・歯科医師434人が参加した。各講座の概要を報告する。講座1・2の概要はこちら。

保団連夏季セミナー・講座3
―コロナ禍で浮かび上がった医療・診療報酬の問題点と今後の展望

医療制度研究会副理事長 本田 宏

本田氏

 講座3では、「コロナ禍で浮かび上がった医療・診療報酬をめぐる問題点と今後の展望」をテーマにNPO法人医療制度研究会副理事長の本田宏氏が講演した。
 本田氏は、「どんな情報でもきちんと考え確かめる姿勢が大事。今回のコロナ禍は未曽有のピンチだが法律や制度が変わりうる大事な転換点」と述べ、問題解決のために正しく判断する必要最低条件は▽全体像を把握する▽世界標準と比較▽歴史においての検証―の3つにあるとした。また、本田氏は、1,600回あまり全国で講演しており、「メディアは真実を伝えない。憲法、法律、国民の声無視で政権トップが権力を行使し、正しい情報も発信する機会がない」と話した。

低い社会保障支出高い患者負担

 本田氏は、「1980年以来、保健所・感染病床が削減され続けている。日本の社会保障支出は欧米と比較し、全体も公費分もともに低く、憲法25条の生存権が守られていない」と指摘。数多くのデータも示し、「医療費亡国論や厚労省の世論操作で医療費が抑制されてきた」と批判した。
 病院経営について、本田氏は、「病院経営は厳しく、ほとんど赤字。黒字の医療法人でも損益差額がたった1.8%に過ぎない。日本の外来診療費が欧米の半分程度で延べ患者数が倍の欧米と医療費は同額になる。内視鏡や盲腸手術等の技術料が欧米に比べ極端に低い。一方、製薬企業の利益は高く内部留保も高額である」と述べ、薬剤費に偏重する医療費支出を批判した。
 患者の窓口負担について、「欧米と比べ高齢化が進行しているが、医療費は抑えられている。欧米では、患者窓口負担が無料かそれに近く低いが日本の窓口負担は重い」と指摘。保険料も「一定以上の高額所得者は上限があり、相対的に負担が軽い」と指摘。応能負担に基づく保険料上限の見直しを求めた。

急性期病床・専門医が不足

 新型コロナへの対応では「世界的に見ても5月末のワクチン接種回数もPCR検査も非常に少ない。日本は急性期ベッドも、ベッド数当たりの医師・看護師数も少ない。10年前から感染症専門医が不足し、必要数に対し半分以下。集中治療専門医も同様に不足」と病床も人も乏しい現状を報告した。
 本田氏は、「日本の教育は自分で考えない人間を形成しているが、欧米では自主性を持ち発言行動することが重視され、多様性を認めている。明治維新からの怨念が長州出身の総理大臣を多数選出しているらしい?根本的状況打開には政権交代しかない」と述べた。

公的病院拡充を

 保団連・協会に対し、「YouTubeなど自主的なメディアで発信が必要」と提案。「病院機能を入院に特化し、外来機能を診療所等のかかりつけ医が受け持つ必要がある。感染症への対応など不採算でも良い公的病院を拡充すべき」と提案した。
 医療費抑制を目的としない真の「かかりつけ医」が、これらを実行するには▽医療費総枠拡大▽医師不足の解消▽患者窓口負担ゼロに近い大幅軽減―など海外と比べても悲惨な状況を変えなければいけない。
 本田氏は、あきらめずに正しい情報発信等の活動を地道に続けなければいけないと述べた。ダジャレ交じりの講演がきちんと定刻を守る「定刻(帝国)主義」の下に終わり、活発な議論と医師(イシ)による上手な(シカイ)で有意義な時間となった。 (理事 武田浩一)


保団連夏季セミナー・講座4―22年改定に向けて、歯科医療のこれからを考える

保団連副会長 田辺 隆

田辺氏

 講座4では、「2022年度改定に向けて、歯科医療のこれからを考える」をテーマに田辺隆保団連副会長が講演した。
 田辺副会長は、20年度改定を振り返りながら、「22年度診療報酬改定に向けた保団連要求(以下、保団連要求)」を紹介しつつ、改定に向けた課題・対応について問題提起した。

厳しい経営環境

 まず、国民医療費全体に対する歯科医療費のシェアは依然として右肩下がりであること、20年の社会医療診療行為別統計から6月審査分のレセプト件数をみると、件数は23.6%減、点数15.5%減と、歯科医院経営を取り巻く状況は厳しい状況であることを指摘した。

院内感染対の初再診引き上げ必要を

 20年度改定の特徴として、(1)新設項目や増減項目が少なく、小幅な改定であった、(2)具体的な改定内容として@歯管の初診月減算A歯科外来環境体制加算の施設基準における「歯科衛生士1名以上が勤務している」としていた人員要件の変更B手術に包括されていた麻酔薬算定が可能にC院内感染防止対策として不十分ながらも初再診料の引き上げなどを上げた。

包括・廃止点数の再評価も

 その上で、現行の歯科診療報酬における、(1)技術料評価のあまりの低さ、(2)長年続けられてきた「包括」という名の点数の廃止、(3)実際の院内感染対策費から乖離があり、医科・医科格差のある初再診料、(4)診療実態にそぐわない算定制限などの矛盾点を指摘しつつ@経費の考え方を取り入れた技術料の再評価A包括・廃止された項目の再評価B初再診料の大幅引き上げと施設基準の廃止C手術と同様に処置や歯冠修復及び欠損補綴で使用した麻酔薬剤料は別途算定できる取扱いにすること、浸潤麻酔の手技料も算定できるようにすべき、などを提起した。

金パラ「逆ザヤ」解消問題も論議

 また、「非経口処に関する調査」に基づき、算定回数の拡大や非経口処と歯周病治療と同月算定を認める要求にしたこと、施設基準の問題、歯科衛生士・歯科技工士の適正な評価の確立、保険給付の拡大、新規技術の保険導入、金パラ「逆ザヤ」問題についても言及した。金パラ「逆ザヤ」問題については@過去の価格を参照することでのタイムラグA商品の市場実勢価格が調査されないという問題点を指摘した。
 討論では、金パラ「逆ザヤ」解消に向けた意見が多く出された。あわせて歯科医療費の総枠拡大や患者負担軽減、ジルコニアの保険導入などの意見が出された。参加者から、「『保険でより良い歯科医療を』署名をツールに対話を進め、歯科医療改善の運動を進めたい」「次期改定に向けての確信がわいた」といった感想が出された。 (理事 池 潤)

発言する講座4の参加者

以上

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