月刊保団連2022年6月号

「道」

人知れず悩みを抱えるヤングケアラー
医療現場で気付いた時は声掛けを

濱島淑惠

特集

コロナ禍と医療現場──2年5カ月を振り返る

2020年1月に国内で初めての新型コロナウイルス感染症患者が確認されてから、2年5カ月が経過した。幾度も感染の「波」が到来し、その度に医療逼迫(ひっぱく)に陥った。国は検査を拡大せず、十分な医療提供体制も確保しないままに引き起こされた感染爆発と医療逼迫は、「人災」といっても過言ではない。

特集では、政府のコロナ対策を検証するとともに、医療現場での奮闘を振り返る。

年表 コロナ禍と医療現場──問われる日本の感染対策

国内で初めての新型コロナウイルス感染症患者が確認されてから、2年5カ月が経過しようとしている。政府による後手後手の対応、感染対策に逆行する施策の繰り返しは幾度も感染の「波」を引き起こし、感染拡大地域で医療提供の危機を招いた。医療分野を中心に、第6波までの政府のコロナ対策を振り返る。

脆弱な日本の検査・防疫体制
──新たな変異株にどう対峙すべきか

感染予防の基本は、①感染経路の遮断(マスク着用、換気、社会的距離など)、②感染源の同定と隔離(検査拡大による早期発見)、③免疫獲得(ワクチン)の3つだ。日本の新型コロナ対策は、当初から感染経路の遮断を国民の自主努力で行うことが主であり、自粛と時短・休業要請に依存してきた。国民は多大な我慢を強いられ、医療関係者は感染のリスクと隣り合わせの中、患者への必死の治療を続けてきた。戦略的な検査に基づく感染制御や医療提供体制の抜本的な整備への方針転換はなされず、根本的な課題としてガバナンスや感染症法整備の問題が明らかになった。国は科学的な施策で、どうしたら社会経済を回していくことができるのかというロードマップを国民に明確に示し、長期的な国家戦略として、新興感染症のグローバル・パンデミックにおける感染危機管理に備える必要がある。

渋谷健司

開業医のコロナ戦記
──政府の対策を問う

コロナ禍も3年目になった。現在も子供たちを中心に感染が持続しているが、対策は初期から変わっていない。コロナ禍を収束させるためにはPCR検査・速やかな治療・適切な隔離が必要であり、保健所機能と国民皆保険制度を基とした医療の両輪で対応できる体制の構築が急務である。そのためには従来の法律、人的・物理的資源を根本的に見直し、ポストコロナに見合った思い切った社会構造の立て直しが必要である。また、コロナに対し前向きに検証できる体制の構築も必要である。

倉持 仁

「コロナ敗戦」を直視せよ

人類難とも言える「百年に一度」のパンデミックとなったコロナ禍で分かったのは、われわれは「宇宙船地球号」に乗る乗客であるということだ。自分だけ、家族・友人だけ、母国だけがウイルスや疫病に勝ったとしても解決しない。世界中の人がワクチンで免疫を獲得し、薬剤や医療の恩恵が必要なのである。効率至上主義や人間中心主義でこの星の環境を傷めつけた人類に、創造主がお灸を据えたとも感じている。

邉見公雄

コロナ禍と保健所職員の悲痛な声 死者数ワースト1の大阪から

コロナ禍によって保健所は急激にひっ迫、医療は崩壊し、救える命が救えない事態となりました。これまでの公衆衛生や医療の後退が今日の事態を招いたのではないでしょうか。現場の声を聞かないトップダウンの対策によって、大阪府のコロナ感染による死者数は全国ワースト1に。保健所で働く保健師や職員から届くリアルな声、実態を基に、大阪府政の下でのコロナ禍の保健所の現状と課題について振り返ります。

小松康則

新聞記事で見る各地での奮闘

2020年1月、国内で初めての新型コロナウイルス感染症患者が確認され、感染の「波」が到来するたびに医療は逼迫(ひっぱく)した。検査を拡大せず、有効な感染対策、十分な医療提供体制を確保しないままに引き起こされた感染爆発と医療逼迫は、「人災」といっても過言ではない。第1波から第5波まで、医療現場での奮闘を全国保険医新聞の記事で振り返る。

診療研究

新型タバコ時代の禁煙・禁煙支援

第5回(最終回) 新型タバコ研究の課題と未来

日本では、新型タバコである加熱式タバコが流行し、タバコ対策全般に大きな影響を及ぼしている。タバコ対策MPOWER(モニタリング、受動喫煙対策、禁煙支援、警告・啓発、広告の禁止、増税・値上げ)との関連に注目して加熱式タバコ問題を理解する必要がある。特に、禁煙支援においては医療者のあるべき姿を目指して、タバコ問題を自分事にして取り組んでほしい。

田淵貴大

投稿

ワクチン接種における歯科医の思い

木村利明

文化

雑草の生存戦略から学ぶ 弱者とはずれ者たちのしたたかな知恵

第4回 オオイヌノフグリ、カタバミ、スギナ

植物は生きていくための“光”を求め、上を目指して伸びていきます。しかし、上を目指すことだけがすべてではありません。中には上を目指して競い合うことをやめ、横に伸びたり下に伸びたりする雑草がいます。無理に周りと同じ方向を目指さなくても、自分が得意な向きに伸びていけばいいのです。そんな自分の伸ばし方を変えた雑草、今回はオオイヌノフグリ、カタバミ、スギナを紹介します。

稲垣真衣

医院経営

経営・税務誌上相談 501
18歳成年に伴う税制上の変更点

益子 良一

雇用問題 245
ミスの多い職員にトラブルなく辞めてもらう方法はあるか

曽我 浩

患者トラブル相談室 2
ネットへのネガティブな書き込み(2)
「オーナーからの返信」機能を使う

尾内 康彦

会員

書評
三浦捷也著『どの子にも生きる喜びと勇気とを。』

濱田俊政