日本の公的医療保険が機能しなくなるTPP参加に反対です
日本の公的医療保険制度は、全国民に公平、平等な医療を保障する国民皆保険システムで、1961年4月に発足し52年目を迎えました。国民の健康達成度はWHOの評価も高く、健康の維持増進に大きく寄与しています。その特徴は、全ての国民が加入対象で、診断・治療・検査・手術・医薬品などの医療が患者に直接提供されます(例外的に現金の支給もあります)。患者は自らの判断で選んだ医療機関を受診できます(フリーアクセス)。その施設数は国内全域に及び、病院8,605施設、医科診療所99,547施設、歯科診療所68,156施設です。医療提供に要した費用は、国庫、保険料から全国共通の公定価格で医療施設に支払われます。公的医療保険がカバーした医療提供の費用は、2011年度で約37兆8000億円(4,740億ドル)※1にのぼります。 アメリカでは、「診断・治療・外科的方法」が特許保護の対象になっています。TPP参加によって、新しい治療方法や手術などが特許保護の対象となる可能性は否定できません。特許を取っている手術が独占されることや、新たに特許料の支払が必要になることが心配です。日本政府が公的医療保険財政の悪化を回避するため、特許を取った治療方法や手術方法などが、公的医療保険の適用外に固定化されることが懸念されます。 アメリカやシンガポールなどは、営利企業病院があたり前の国です。日本がTPPに参加した場合、日本政府が法律で規定した営利企業病院の参入禁止が非関税障壁とみなされ、撤廃の対象となる可能性があります。営利企業は、出資者に対する剰余金の配当を最優先するため、コスト削減による安心・安全の低下、不採算の部門や地域からの撤退、患者の所得額による選別といったことが懸念されます。日本政府は、「剰余金配当については、非営利性を損なうものであり適当ではない」との見解を公表しています。 TPPに盛り込まれる方向のISD条項は、例えば、日本政府が公的医療保険の適用を前提として臨床研究している「先進医療」を公的医療保険適用に移行する場合、「先進医療」を対象とした保険商品の売上げに影響が出るという理由で、ISD条項を使って国際投資紛争仲裁センターに提訴することが可能となります。保険会社が商品販売のために、公的医療保険への適用自体をやめさせることができるわけです。また、日本政府が公的医療保険の医薬品価格を引き下げようとした場合、製薬メーカーが損害を被るとして、ISD条項を使って提訴することも可能です。
お問い合わせなど :tpp-hdr@doc-net.or.jp ※1 1ドル87.16円 (2010年平均為替レート) |