3.18年間で6%引き下げられた
医療費への国庫負担率
政管健保で引き下げられた国庫負担率は、国民医療費全体でも引き下げられています。1980年からの国民医療費の負担構成を見てわかることは、国の国庫支出が18年間で30%から24%に6%引き下げられたことです。この6%は金額にして約1兆5千億円にあたります。
いっぽう家計からの支出は40%から45%へ5%引き上げられました。つまり私たちの窓口負担が増やされてきたのです。また事業主負担は1%減少し、地方自治体の負担は3%増えました。このことから、国と事業主の出し分を減らし、代わりに家計と自治体に負担させたことがわかります。
4.日本の医療費は高いのでしょうか
窓口負担引き上げの理由の一つに、日本の医療費が30兆円を超えて増え続けていることがあげられます。確かに日本の医療費30兆円は大きな金額です。しかし世界第2位の経済大国の国力からみるとどうなのでしょうか。国内総生産(GDP)に占める医療費の割合を比較しました。
日本は先進国といわれる29カ国(00年時点)のなかで18位。国際的に見るなら、国力に見合った医療費を出していないことがわかります。つまり医療費30兆円は国際的に比較するなら、けっして多くない額なのです。
5.日本の医療は国際的に最優等生
日本はOECD加盟29カ国(当時)中、18位という低い医療費でありながら、「健康達成度(Overall goal attainment)」や「健康寿命(Healthy life expectancy)」はWHO(世界保健機関)から世界一と評価されています。これは日本の医療制度が全体として健全に機能していることを表しています。もちろん、指摘されているような課題を克服していく取り組みは重要です。
いっぽうアメリカは世界一高い医療費を使ってもなお、健康達成度は15位、健康寿命は24位となっています。これはアメリカの医療が産業化、営利化していることや、老人と低所得者以外の公的な医療保険制度がなく、無保険者が人口の16.3%(1998年)いることと無関係ではありません。
アメリカの現状は、日本が見習ってはいけない見本であることは明らかです。
6.窓口負担を引き下げる道
私たちは、世界的に突出した日本の窓口負担を段階的に引き下げ、将来的には無料にできると考えています。日本ではあまり報道されていませんが、イギリスやドイツ(外来)などの先進国では、すでに医療の窓口負担が無料になっています。
医療無料化が可能な理由の一つは、これらの国の政府が、国民の納めた税金を医療や社会保障に重点的に投入していることがあります。これに対し日本では、先に見たように、医療への国庫負担率(投入する税金の割合)を引き下げてきました。また年金・医療・介護などの「社会保障」への給付(社会保障給付費)も、ヨーロッパ諸国の2分の1ほどしかありません。
日本は世界第2位の経済大国です。無駄が指摘されている予算(大型公共事業や防衛費)を削れば、直ちに10兆円以上の財源が捻出できます。医療や年金、介護の費用負担を現行より大幅に下げることができるのです。
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