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学会、患者から危惧
―中医協 保湿剤の処方制限を議論―

全国保険医新聞2017年11月25日号より)

 

 

 中医協で、ヒルドイドなど保湿剤の給付制限が議論になっている。学会、患者団体からは、患者に不利益が及ぶと危惧する声があがっている。

 

 健保連は9月に、美容目的利用の可能性があるとして、外来診療において皮膚乾燥症に対して、ヒルドイド等保湿剤が他の外皮用薬又は抗ヒスタミン薬と同時処方されていない場合は、保険適用から外すべきとの提言を発表した。
 中長期的には、ヘパリンナトリウムも含む保湿剤の処方そのものを保険適用外にすることも検討すべきと求めている。

 

単剤処方ある―日医、がん患者

 11月1日の中医協で、厚労省は、ヒルドイド等保湿剤について「美容目的で使用されている実態があるとの(新聞等の)指摘があり、学会等より適正使用に係る注意喚起がなされている」と提起。ヒルドイド等が1度に10本分(1本25グラム)以上処方されているケースもあるとして、「適正使用」として給付制限につながる議論を促した。
 日医委員は、「皮膚乾燥症は(適応となる)皮脂欠乏症であり、悪化防止のためにステロイド外用薬投与を検討する前段階として、単剤使用は少なくない。全身の乾燥で一度に大量に使う場合もある」と述べるとともに、「注意喚起もあり、しばらく様子を見るべき」と指摘する。日本皮膚科学会は10月31日、「保湿剤による治療を必要とする患者に大きな不利益を生じかねないため、処方制限には反対する」要望書を厚労省等に提出すると発表している。
 「卵巣がん体験者の会スマイリー」も11月6日、抗がん剤・放射線・手術等に伴い頻繁に起きる皮膚の乾燥・炎症・痒みへの対応として「皮膚乾燥症に対する保湿剤の単剤処方」を受ける場合があるとして、処方制限に反対する要望書を厚労省に提出した。
 処方の量・仕方で一律に給付制限を行えば、必要とする患者に不利益が及ぶことは明らかだ。

 

経済的負担大きい

 保湿剤そのものが保険外となれば、患者に多大な不利益が及ぶ。厚労省も指摘するように、「全身型アトピー性皮膚炎や魚鱗癬などで多量の保湿剤が必要となる患者」が存在する。
 ヒルドイドソフト軟膏は1本50グラムで薬価1,185円。1回の受診で2本処方され、月2回通院すると4,740円。3割負担なら月1,422円となる。同一成分を含む市販薬は同2,634円(メーカー希望小売価格)で4本で月1万536円となる(10月25日の財政審資料より)。多少の値引きで購入しても、月数千円の大幅な負担増に変わりない。保湿は継続的に必要であり、負担増は大きい。
 アトピー性皮膚炎などでは定期の通院、外用・内服薬等に加え、各種検査を行う場合もあり、減感作療法などは頻繁な受診が求められる。シャンプー・石鹸など日用品から服装・寝具に至るまで体に合う高額な商品の使用や、中には住居改修等が必要な場合もある。重症者には精神的ケアも求められる。
 日常生活での経済的負担が大きい中、保湿剤が全額自己負担となれば、治療・生活全般にしわ寄せが及ぶ事態になりかねない。保湿剤の保険外しは認められない。

以上