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「2割化」実施阻止へ 国会論戦を振り返るA
狙いは医療給付費抑制

全国保険医新聞2021年7月25日号より)

 

 先の通常国会では75歳以上の医療費窓口負担に2割負担を導入する法案が、自民、公明、維新、国民民主各党の賛成で成立した。立憲民主、共産、社民各党は反対した。国会審議では2割負担導入による財政影響効果、とりわけ受診抑制とその影響について政府案に厳しい追及が及んだ。2カ月にわたる国会審議を振り返る。(3回連載)

 

「現役世代」の負担軽減わずか月30円

 政府の提案では、2割化の導入で医療給付費が1880億円減少すると見込んだ(2022年満年度)。この給付減によって誰の負担が減るかを見ると、政府の試算では、後期高齢者の支援金が720億円減、後期高齢者保険料で180億円減、公費負担が980億円減。最も負担が減るのは国・地方が支出する公費である。
 一方、菅首相をはじめ政府が強調する「現役世代の負担上昇を抑える」効果はどうか。後期高齢者支援金の720億円がそれにあたる。政府資料では、「現役世代一人当たり」にすると軽減額は年間約700円。ただしこれは被保険者本人負担分と事業者負担分の合計。本人負担分の軽減は、月額30円ほどにすぎない。「現役世代の負担軽減」は公費負担削減のダシに使われたと言わざるを得ない。

 

健康影響「わからない」

 2割化による1,880億円の医療給付費減が、どのような原因で生じるか。政府資料では、「実効給付率が変化した場合に経験的に知られている医療費の増減効果(いわゆる長瀬効果)を見込んでいる」とある。
 この「長瀬効果」による医療費抑制効果はどのくらい生じるかという質問に対して、田村憲久厚労大臣は1,880億円のうち900億円であることを明らかにした。さらに立憲民主、共産の各委員からは、2割化で必要な医療を受けることまでが抑制され、健康に影響が及ぶことはないのかが厳しく追及された。田村厚労大臣は、これに対して明確な答弁はせず、「正直申し上げて、どういう影響が出るのかというのは分からない」、「基本的には必要な医療はしっかり受けていただく」と述べるにとどまった。「2割負担導入でどういう影響があるのか調査すべき」との質問に対しても、政府からの回答はなかった。また菅首相は、「どの程度受診抑制が起きるか推計していることを知っていたか」との質問に対し、「受診行動の変化に伴う具体的な影響額は聞いていなかった」と答弁している。
 衆参両院の本会議で菅首相は、2割化により受診行動が変容することはあっても、そのことは「直ちに患者の影響を意味するものではない」と述べた。しかし、国会審議を通じて明らかになったのは、窓口負担2割化による受診抑制、それによる900億円以上の給付費減を狙いながら、影響を受ける患者の健康への影響が考慮されていないということだ。「2割化導入」は早くて来年10月。患者の健康を危険にさらす2割化の実施は中止すべきだ。

以上

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