1章 政府の医療改革がめざすもの



 「健保法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく基本方針」が2003年3月に閣議決定され、診療報酬体系の見直しを掲げられ、厚労省試案でも見直しの考え方が示されています。診療報酬改定でねらわれていることは、何でしょうか?








 診療報酬は、国民が保険で受けることができる診療の範囲を定めた「医療サービスの料金表」といえます。その範囲を超えて行なった診療は、たとえ医学的に妥当でも、医療機関には支払われません。



 診療報酬を引き下げるということは、保険で行なうことができる診療の範囲を狭めることに直結します。また、政府は診療報酬引き下げとセットで、患者さんから徴収する保険診療外の範囲を大幅に拡大する提案をしています。保険外診療の範囲を拡大することが診療報酬抑制の有力な手段とされていることに注意が必要です。






 2003年4月から大学病院など「特定機能病院」の一般入院医療に「DPC(Diagnosis Procedure Combination)」と呼ばれる疾病ごとの定額制が導入され、2004年4月から民間病院のごく一部に試行的に広げられました。疾病ごとの平均在院日数を短くしなければ、医療費が減額されます。
 定額制のねらいは、その金額をコントロールすることによって、公的医療費を抑制することです。しかし、それで患者さんの医療を受ける権利が守られるのか、という指摘もされています。
 診療報酬は、国民に保障する保険医療の「範囲と質」を定める役割を担っています。保険で良い医療を提供するには、本来、治療にかかった費用が保障される必要があります。




 政府もマイナス改定や定額制で診療報酬を抑制すれば、医療機関の経営が成り立たなくなることはわかっています。また、株式会社病院が医療に参入しても、公的医療保険では大もうけを追求できるわけではありません。
 そこで考えられているのが、いわゆる「混合診療」です。日本の医療制度にはじめて、保険導入の対象とならない医療を基本的な仕組みとして導入しようとしています。これがいわゆる「混合診療」です。これは、公的医療保険を縮小し、「公私2階建て」医療制度にしていくことになります。患者の選択にかかわるようなものについては、保険診療と保険外診療との併用を認める制度の活用により、応分の負担を求める考えです。さらに「市販類似医薬品」、かぜなどの「軽医療」は保険給付から外すことや、「保険免責」(かかった医療費のうち、一定金額までは保険給付から外す)のしくみを導入するなど、「保険証」が使えない医療を拡大し、民間保険の参入を増やすことを検討しています。






 1981年を100として比較してみると、診療報酬の改定率はほぼ横ばいですが、現金給与総額は36ポイント、消費者物価は24ポイント増えています。