1章 政府の医療改革がめざすもの





 公的医療制度を都道府県単位に再編・統合し、都道府県ごとに給付と負担が連動する仕組みを導入しようとしています。
 現在、市町村が運営している市町村国民健康保険(以下、国保)は、都道府県単位で広域化をめざし、市町村国保を段階的に統合し、政府管掌健康保険(以下、政管健保)は、国から独立した公法人を設立し、都道府県に支部を設置するとともに、都道府県単位の財政運営に切り替え、都道府県の医療給付費を反映した保険料を設定する計画です。
 健康保険組合(以下、健保組合)も、小規模や財政ひっ迫の健保組合の都道府県単位に再編・統合した「地域型健保組合」をつくる、大企業の健保組合や共済組合は従来通りの全国展開を認める方向です。









第1には、住民に提供する医療の水準や医療費を地域(住民、医療機関、自治体)の責任で管理させ、国が責任を持たなくても良いようにしようとしています。

第2には、国庫負担の削減と都道府県単位の医療費で抑制です。医療費の高い県では「保険料を引き上げるか、診療報酬を引き下げるか」、医療費の低い県には「補助金を減らす」など都道府県単位で医療費抑制への競争をさせることにあります。

第3には、診療報酬を都道府県ごとにすることもねらっています。「1点単価を10円から9円にする」「入院基本料を地域ごとに設定する」なども考えられます。









 国の責任と負担を後退させながら、地方に責任転嫁し、都道府県に医療費の抑制を競わせようとしています。診療報酬や補助金による誘導も行いつつ、目標未達成の県にはペナルティーを課す計画です。こうした医療保険を都道府県単位にすることにより、住んでいる自治体によって保険料や医療サービスの内容に格差が出てくる「医療保険制度」になります。
 また、医療費抑制効果をあげるため、地域別の診療報酬設定を制度化することは、全国民に等しく安心、安全の保険医療を保障する診療報酬の役割からみて、認められるものではありません。
 高齢者を病院から追い出し、いわゆる「生活習慣病」には「健康の自己責任」を押しつけるなどの強引なやり方での給付費抑制は、患者の医療を受ける権利が脅かすことになります。国の責任と負担で、患者本位の医療を実現すべきです。