5章 日本の医療 世界からみると





 OECD加盟国と日本の患者負担を一覧表にしてみました(41〜43ページ参照)。驚かされるのは、加盟国の3分の1が、入院や一般開業医の医療に対する患者の一部負担はありません。そして、一部負担がある場合でも、「定額」や「年額上限つき」が多数派で、「定率」は少数派だということです。また、高齢者、児童、妊産婦、障害者や低所得者などについては、負担を免除している国が多くあります。
 一方、「定率負担」をとるルクセンブルクでは、一般開業医0.5割、入院は1日10ユーロから15ユーロの定額と、配慮されています。また、フランスでは、診療費の全額をいったん支払いますが、「基礎的疾病給付」(公的保険制度)と「付加的疾病給付」(相互共済制度)の両方から、そのほぼ全額が払い戻される仕組みとなっています。
 このように、厳しい経済・財政状況の中でも欧米諸国は、国民の負担を極力抑える方向で、さまざまな努力を重ねていることがわかります。










 患者さんは医療機関にかかった際、一部負担金としてかかった医療費の一部を窓口で支払います。日本の医療費に対する患者の実際の負担(実効負担率)は、先進国と比べて異常な高さとなっています。一方、医療費全体の水準はアメリカ、ドイツ、フランスなどの6割でしかありません。















 日本は、OECDの2005年発表のデータでみると、OECD加盟国中、18位という低い医療費で、世界保健機構の00年02年のデータでは健康達成度、健康寿命が第1位と評価されています。これは、日本の医療制度は、全体として健全に機能していることを表しています。もちろん、現在指摘されているようなさまざまな課題を克服していく取り組みは重要です。
 一方、アメリカは世界一高い医療費を使っていてもなお、健康達成度は15位、健康寿命は29位となっています。これは、老人と低所得者向け以外の公的な医療保険制度がなく、無保険者が人口の15.6%、4,500万人(2003年)もいることや、医療が産業化、営利化していることなどと無関係ではありません。
 アメリカの現状は、日本が決して見習ってはいけない「見本」であることは明らかです。