7章 これからの医療



 私たち保険医は、日本国憲法25条の国民の生存権の保障、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上、増進を国の義務とする考え方に立ち、医療費の国庫負担を現行の24〜25%から30%に戻すこと、支払い能力に応じた払える保険料とすること、働く人たちの社会保険への完全加入による財政改善を提案します。


 皆保険医療を充実させるためには、患者・国民が保険診療で受ける医療の質の確保、給付範囲の拡大が図られる必要があります。国民が必要とする医療はすべて医療保険の対象とすべきであり、保険のきかない医療を拡大させる混合診療には反対です。同時に株式会社のような営利本位の医療機関の参入は禁止しなくてはなりません。


 3割もの患者負担は世界的にみて異常です。先進国の医療費に対する患者の実際の負担(実効負担率)は、日本は18.3%ですが、スウェーデン3.0%、イギリス2.0%とヨーロッパ諸国と比べて高くなっています。その負担の重さが受診抑制を拡大して病気を増やし、重くしています。当面2割負担に軽減して、さらに引き下げをめざすべきです。





 この10年間で企業の税金・社会保険料負担が減ったのは、先進国のなかで日本だけです。大企業はその力に応じて、ヨーロッパ並みに応分の負担をすべきです。医療保険財政に占める医薬・材料や医療機器の価格も、国際的にみて適正な水準に引き下げれば、それだけでも数兆円の財源が確保できます。