【政策解説】都道府県単位で医療費抑制
―医療保険制度改革関連法案とはB
医療費目標値の設定―
(全国保険医新聞2015年4月5日号より)
政府は3月3日、国民健康保険法、健康保険法、高齢者医療確保法などを一括した医療保険制度改革関連法案を閣議決定した。同法案には社会保障プログラム法に基づき、国保の都道府県化、保険給付の縮小と患者負担増、医療費抑制策の強化などのメニューが盛り込まれている。内容を順に解説する。今回は都道府県単位での医療費抑制策の強化、予防・健康づくりのインセンティブの強化などである。
「目標」設定に知事会は反対
政府は、医療・介護総合法による病床削減など提供体制の再編策、今回の法案による国保の都道府県化、医療費適正化計画の見直しによって、都道府県単位で医療費抑制策を強化する方針である。
法案には都道府県が策定する「国保運営方針と医療費適正化計画との整合性の確保」が盛り込まれた。「地域医療構想と整合的な医療費適正化計画の見直し」(骨太方針2014)と併せて、国は都道府県を医療費抑制の推進役にしようとしている。
医療費適正化計画では、「医療に要する費用の目標」を定め、病床再編を医療費推計に反映させ、後発医薬品の使用割合などの目標値を設定する。医療費の実績が「目標」とかけ離れた場合、国は都道府県に原因の分析や対策を強化するよう求める。法案には「保険者、後期高齢者医療広域連合、医療機関その他の関係者と協力して必要な対策を講ずるよう努める」ことが盛り込まれ、医療機関にも対策に協力するよう求めている(表)。
都道府県に医療費の「目標」を持ち込むことに対して、厚労省の審議会では、全国知事会などから「目標として設定し、都道府県に結果責任を負わされても責任は持てない」、「都道府県を拘束する懸念がある」として反対する意見が出ている。
病気のリスクで 保険料増額も
法案には、社会保障プログラム法の「個人の健康管理、疾病の予防等の自助努力が喚起される仕組み」として、予防・健康づくりのインセンティブの強化策が盛り込まれた。
保険者に対しては、後期高齢者医療支援金を「広く薄く」加算した上で、後発医薬品の使用割合を高めた保険者などには支援金を最大で10%減額する。
個人の「自助努力についての支援」を行うとして、保険者が一定の基準を満たした加入者に対し、「保険料への支援」として、例えば1万円の現金給付をできるようにする。厚労省の審議会で、医療機関を一定期間、受診しなかった加入者を対象とする案が示されたが、反対する意見が相次いだ。
政府の「日本再興戦略改訂2014」では、財政的な増減を生じさせない形にするとしており、健康づくりを怠り、病気のリスクが高くなった加入者は保険料の増額などを求める方向だ。国民を医療費抑制に駆り立てる仕組みをつくることが懸念される。保険料は所得に応じて、保険給付は平等にするという国民皆保険の原則を崩すことになりかねない。
国民皆保険の 形骸化のおそれ
法案の附則には、@保険給付の範囲、A患者負担、B医療費適正化についての検討規定が盛り込まれた。さらなる給付縮小・負担増に道筋をつけようとするものである。政府の審議会では、75歳以上の窓口負担を1割から2割へ上げる、湿布薬などを保険から外す、新薬を使うときは後発品との価格差を患者負担にする―などが検討されている。国民皆保険の本質である「必要な医療が公的保険で受けられる」ことが形骸化するおそれがある。
図1 患者申出療養(仮称)のしくみ
以上