政府歳出改革、社会保障費削減に重点
―診療報酬引き下げ方針―
(全国保険医新聞2015年6月25日号より)
政府は6月10日、経済財政諮問会議(議長・安倍首相)を開き、「骨太の方針」の骨子案を示した。2020年までに基礎的財政収支(いわゆるプライマリーバランス)を黒字化する目標に向けて、2016年度から5年間の「経済・財政再生計画」を策定する。今後3年間を「集中改革期間」と位置付け、「歳出改革は聖域なく進める」として、社会保障を「重点分野」として位置付けた(政策解説、諮問会議解説参照)。
社会保障費抑え込む
バブル崩壊後の不況の下、基礎的財政収支は20年以上赤字が続いている。15年度の赤字額は16.4兆円だ。これをわずか5年で黒字化するという目標だ。
歳出削減の「重点分野」は社会保障費だ。社会保障費の自然増は年間およそ8000億から1兆円と見込まれる。財務省・財政制度等審議会(財政審)は社会保障費の伸びを高齢化の進行に伴う5000億円に抑える方針を示した。小泉政権時代、「医療崩壊」を深刻化させた毎年2200億円削減を上回る削減になる。
薬価引き下げの振り替え否定
財政審は、診療報酬本体・介護報酬改定について、共にマイナス改定を提案した。薬価引き下げ分の診療報酬本体への振り替えも否定した。
経済財政諮問会議では、リーマンショック後のデフレに対応する形で、診療報酬本体も段階的に引き下げることが提案された。08年以降の消費者物価指数や労働者の賃金の低下に対して、診療報酬が「高止まり」しているとされた。
患者負担増と給付減
両会議共に、大幅な患者、利用者の負担増と保険給付の削減を提案した。
薬については、湿布、目薬、漢方薬など市販品類似薬を保険給付から外す。ジェネリックのある先発薬は患者負担を引き上げる。
高齢者を狙い撃ちした提案も目立つ。75歳以上の高齢者の窓口負担を段階的に1割から2割へ引き上げる。70歳以上で窓口負担が3割となる現役並み所得者の範囲も広げる。高額療養費制度も70歳以上の負担上限月額を引き上げる。介護保険でも利用料2割の対象を拡大する。
全ての世代に対する負担増として、受診時に現行の窓口負担に加えた定額負担の導入、急性期も含めた全ての入院患者に水光熱費相当の居住費を負担させることなどが提案された。
医療充実求める声を
年末の16年度予算案編成までに診療報酬の改定幅やさらなる医療改革の内容が決まる。政府方針は医療機関や患者に負担を押し付けるものだ。
全国保険医団体連合会は今後、患者・国民と医療者が共により良い医療を求める声を上げる取り組みに力を入れる。
以上