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マイナンバー利用範囲拡大
―特定健診や預貯金の情報も管理―

(全国保険医新聞2015年9月25日号より)

 

実施中止を求める

 9月3日、マイナンバーの利用範囲を拡大する法案が成立した。保団連はマイナンバー法改定に抗議する声明を発表。拙速な制度実施の中止も求めている(声明の全文はこちら)。

法施行前に「改定」

 改定法は、現行法で「社会保障」「税金」「災害対策」の3分野の事務での使用に限定されているマイナンバーの利用範囲を、特定健診や予防接種履歴、個人の預貯金の情報の管理に拡大する内容だ。基礎年金番号とマイナンバーの連結の時期は延期された。
 そもそもマイナンバー法自体の施行は、一部を除き今年10月5日から。法施行前に利用範囲を拡大する法案を可決することは、「法律施行後3年を目途として施行の状況等を勘案」して検討を加え、「国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずる」と定めるとするマイナンバー法附則6条を大きく逸脱するものだ。

現行法でも情報漏えいの危険

 マイナンバー制度は、国民一人一人に個人番号を割り当て、国や自治体が社会保障や納税関連の情報を管理するもの。来年1月から、医療機関を含む事業者も、従業員などの個人番号を取得・管理することになる。この制度については、情報漏えいと悪用の危険性が繰り返し指摘されてきた。6月には、日本年金機構から125万件に上る大量の年金情報が流出した。公的機関ですら不備のあった情報管理を、民間事業者に行わせることは非現実的である。

さらなる利用 範囲の拡大も

 「日本再興戦略改訂2015」(成長戦略)は、マイナンバーのインフラを利用して、健康・医療・介護分野の個人情報をデータ化し、民間利用を推進する方針を打ち出している。機微性の高い個人の医療情報がマイナンバーと紐付けられて管理・集積され、「効率化」の名による医療費抑制や企業・民間事業者に利活用されてはならない。
 政府はマイナンバー制度のインフラ整備に不可欠な個人番号カードの普及に躍起だ。成長戦略では、個人番号カードに健康保険証機能を持たせることを盛り込んだ。
 財務省は消費税10%への増税時の負担軽減策として、個人番号カードを用いて還付する案を示した。個人番号カードの使用を通じて各消費者の食料品などの購入金額を把握し、現行税率8%との差額を還付するというもの。麻生太郎財務大臣は記者会見で「カードを持っていたくなければ持たないでいい。その代わり、その分だけの減税はない」と述べている。
 保団連は9月9日、マイナンバー法の利用範囲を拡大しないこと、10月からの番号通知、16年1月からの利用開始の中止を求める声明を、住江会長名で発表した。

以上