ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

 

地域医療への影響懸念
―新専門医制度―

全国保険医新聞2016年3月5日号より)

 

 2017年から実施が予定されている新専門医制度は、すべての医師が専門医を取得することを基本とし、新たな専門医として総合診療専門医の創設を打ち出している。国民皆保険の担い手である医師のあり方や地域医療に大きな影響を及ぼす。
 
 専門医資格の更新や旧資格からの移行に「活動実績」「診療実績」が評価されることから、医師数管理、医師の階層化・差別化、診療報酬上の不利益につながることが懸念される。また、総合診療専門医を、地域包括ケアの要と位置づけ、患者のフリーアクセス阻害、医療費抑制や医師の管理統制につなげる動きにも注意が必要だ。保団連は国民皆保険制度と地域医療を守る立場から制度の問題点の改善に努めることとしている。

「延期」も検討 社保審部会

 新専門医制度について、2月18日の社会保障審議会医療部会で議論が行われた。
 部会では、研修施設群の偏りによる医師の地域偏在や地域医療への影響を懸念する意見が出された。
 日本専門医機構の池田康夫理事長は、地域医療に十分配慮した制度になるようにしていると述べた。しかし、専門紙の報道では、日本医師会の中川俊男副会長が、医師偏在を強めるとして、「地域医療に配慮というが逆行している」と指摘。また「指導医の数をクリアできる病院はなかなかない。次の医療崩壊の先駆け」(全国自治体病院協議会・邉見公雄会長)、「地方の中小病院やへき地の病院は、とどめを刺される」(日本精神病院協会・山崎学会長)など、厳しい批判が相次いだ。また、初期臨床研修を終えて専門医の研修を受ける「専攻医」の待遇や、日本専門医機構のあり方についても意見が出された。
 実施時期については、17年4月の開始は「拙速」「延期すべき」との意見が出された。部会では今後、専門委員会を設置し、実施時期も含めて検討することとした。
 新専門医制度は、厚労省から独立した第三者機関である日本専門医機構が中心となって「専門医」を認定、更新する制度。社会保障審議会での結論に拘束力はないものの、医療界の主要なメンバーから厳しい意見が相次いだことで、今後に影響を及ぼすことは必至だ。

新専門医制度の概要

 厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」最終報告書(2013年4月)によれば、制度のポイントは次の4つ。@学会から独立した中立的な第三者機関が専門医の認定、養成プログラムの評価などを統一的に行う、A従来の専門医制度を改め、18の「基本領域専門医」と「サブスペシャルティ専門医」の2段階とする、B医師は今後、19の基本領域のいずれかの専門医を取得することを基本とする、C 19番目の「基本領域専門医」として総合診療専門医を創設する。
 制度の基本設計は、2年間の臨床基礎研修の後、概ね3年の研修と試験を経て、基本領域専門医を取得する。
 2014年5月に第三者機関として日本専門医機構が設立され、専門医の認定・更新基準、養成プログラム、既存の専門医から新専門医への移行基準の策定を準備している。15年4月から初期臨床研修に入った人たちが、2017年度から後期研修(専攻医研修)を受け、20年度には新制度での専門医が誕生する。
 従来の学会認定の専門医については、15〜19年度の間に新制度での専門医に移行する措置がとられる。

以上