住民の命綱が破壊された
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国境なき医師団日本会長 加藤 寛幸 氏 |
住江 アフガニスタンでの米軍による病院空爆では、多くの死傷者が出ました。
加藤 昨年10月、アフガニスタン北部のクンドゥーズ州にある国境なき医師団病院(外傷センター)が米軍による空爆を受け、患者や医療スタッフら42人が死亡しました。
同センターは地域に暮らす数十万人の住民をカバーする医療機関であったため、この攻撃はスタッフらの命を奪っただけでなく、地域の命綱を破壊し、救えるはずの命を脅かしたのです。
住江 米軍の空爆は「誤爆」だったのでしょうか。
加藤 事件後米軍当局は「誤爆」と発表し、マスコミ各社で報道されました。しかし私たちは、米軍やアフガニスタン政府に外傷センターの位置を知らせ、空爆被害を未然に防ぐ努力を行ってきました。空爆が始まった直後にも、米国、アフガニスタンの当局に連絡し、直ちに空爆を止めるよう伝えています。
その後爆撃に関する米国政府の説明は二転三転し、当初は付随的な被害や悲劇的な事故と呼び、アフガニスタン政府に責任を転嫁しようとしたり、あげくには爆撃は人為的・技術的ミスが重なった結果だとしています。この点について、国境なき医師団(MSF)は米国の説明を鵜呑みにはできないと考えています。
住江 調査などは行われていますか。
加藤 私たちは、外傷センターへの空爆に対し、独立した組織による原因究明を求めており、国際事実調査委員会に申立を行いました。
また、ホワイトハウスに署名54万筆を提出し、MSFの外傷センターへの空爆に関する同委員会の調査に同意するよう求めました。
イエメンやシリアでも相次ぎ支援する医療施設が爆撃されています。国際事実調査委員会はジュネーブ条約に定められた国際人道法への違反を専門的に調査するために創設された機関であり、相次ぐ病院への爆撃に関する調査が行われるか否か、同委員会の存在が問われています。
住江 イエメンやシリアでも医療施設が攻撃されているということですが、これらがMSFの活動にはどのような影響を与えているのでしょうか?
加藤 MSFでは、世界約60カ国で約3万8,000人のスタッフが医療援助活動を展開しています。現地のニーズを最優先に活動しますが、スタッフの安全確保のために活動地の治安状況などの分析は非常に厳格に行っています。紛争地域での医療活動が尊重されず、医療者や施設が攻撃の対象となる状況では、活動が制限される事態に追い込まれてしまいます。
現地では赤十字や他のNGOと連携することもありますが、一連の事件は、そのような医療支援を行う団体の活動に著しい影響を与えます。
一番困るのは、医療を求めている人にそれが提供できなくなることです。クンドゥーズでも、人々は一日も早く外傷センターの再開を望んでいます。
住江 中立的であるはずの医療支援が軍事力により破壊されているところに、恐ろしさを覚えます。
加藤 私自身、昨年10月にアフガニスタンに入り、現地のスタッフと話しをする機会がありましたが、MSFは危機的状況にある国々で他に行き場のない人びとを支援対象としてきただけに、献身的に活動してきた現地の医療スタッフのことを思うと怒りでいっぱいです(「月刊保団連」4月号にインタビューの詳細を掲載)
爆撃の日も患者の治療を空爆で死亡したモハマッド・エーサン・オスマニ医師(32歳)への追悼文 集中治療室の医師のホープでした。この活動に人並みならぬ情熱を持ち、患者に思いやりと献身をもって接していました。彼は笑い上戸で、まぶたに浮かぶ顔はいつも笑顔です。 |
ベッドの上で患者が焼かれたアフガン空爆・看護師ラヨス・ソルタン・イェクス氏の証言 私はセンターの避難室で寝ていたのですが、午前2時ごろ、爆音で目が覚めました。最初は何が起きているのかわかりませんでした。直近の1週間でも爆撃や爆発の音は聞こえていたものの、どれも離れた場所からの音でした。でも、今回は違います。近距離からの轟音でした。最初はとにかく混乱していました。それから、粉じんが晴れ、状況の把握に乗り出したところで、再び爆撃がありました。20〜30分後、私の名前を呼ぶ声が聞こえました。救急処置室の看護師だったのですが、片腕に重傷を負い、よろめいていました。全身血まみれで、至る所けがだらけでした。 |
以上