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【地域医療構想】療養の場なくなる
―高知県に見る「地域差解消」の難しさ―

全国保険医新聞2016年4月5日号より)

 

 都道府県で地域医療構想(構想)の策定が進む。国は「地域差解消」等を理由に、療養病床削減を求めている。病床数(人口10万人当たり)が全国で最も多い高知県の動向から、病床削減がもたらす影響について考える。

療養等4割削減、実態調査実施

 高知県は、国が示す一番緩やかな削減条件の推計でも、県内の一般・療養病床約1万6,100床から約1万1,200床に30%削減となる。うち、慢性期病床では6,892床から4,263床へ4割近い削減が見込まれている(病床機能報告の未報告があり、今後さらに削減数変動の可能性あり)。大幅な削減を求められる中、県では県医師会と連名で、療養病床の入院患者全てを対象に「療養病床実態調査」を昨年12月に実施した。療養病床の患者の状態所得・家族背景、医療・看護等の実態を詳細に把握し、医療・介護関係者と現状を共有して、現実的な対応策を検討する構えである。

重症・重度化、所得低下

 調査結果は、構想の議論を進める県の地域医療構想策定ワーキンググループ(WG)の第3回会合(2月29日)に報告された(表)。
 患者の心身、処置等では、医療療養で医療区分・ADL区分が高くシフトし、介護療養でも要介護度4・5の割合が増えている。両病床で喀痰吸引、経管栄養、膀胱カテーテルなど日常的・継続的な医学管理が多く、特に夜間の喀痰吸引が多い。所得や家族等の状況では、単身世帯・高齢者のみ世帯が依然半数超を占める中、低所得者が増え、日中・夜間介護力のない割合も8割近くに増加している。
 結果からは、独居等が半数以上を占める中、患者の重症・重度化の進行、所得・家族介護力の低下など、患者とその生活・社会環境がますます厳しくなっており、在宅移行に多大な困難が伴う現状がうかがえる。

深刻な過疎・高齢化等が背景

 国が問題視する病床数について、県は、WGの第2回会合(15年12月1日)で増加の背景を報告している。
 高知県は、▽全国に先行して高齢化が進み、独居の高齢者が多い▽通院に不便な中山間地域が多い▽核家族化の進行等を背景に、病院が「介護・療養のニーズの受け皿」を担ってきた歴史的経緯―が示されている。
 1964年に県病床数(人口当たり)は全国1位となった。好景気の60年代に、高知市への人口集中が進み、中山間地域の過疎化、核家族化等が進行した。結果、家族介護力が不足し、入院ニーズが増加する一方、公的病院の病床数が少なく、製造業等の第2次産業も脆弱な中、医療機関が主な投資先となり、高知市を中心に民間病院開設が進み、今に至っている。
 こうした事情もあり、療養病床数は全国1位だが、特養は同29位、老健は同45位と低く、介護保険3施設では同8位となる(75歳以上当たり定員数)。療養病床の削減は、文字通り、行き場をなくす患者を生むとの危惧がWGで多数出された。
 高知県一つ見ても、地域の医療提供体制は、世帯構成、気候・地勢から官民状況、産業構造に至るまで、多様な要因が絡み合った結果として存在する。「地域差解消」は、病床削減ありきの理屈といわざるを得ない。

以上