TPP審議入り ここが心配―論点をふりかえる
TPP(環太平洋連携協定)の国会承認を求める議案などが4月5日の衆議院本会議で審議入りした。広範な分野に影響するTPPの論点、問題点をふりかえる。
●除外規定がないTPPによる日本の関税撤廃率は95%。農林水産品では2,594品目のうち2,135品目(82%)が撤廃される。「聖域」とした重要品目も170品目(29%)が撤廃。重要品目以外では98%が撤廃となる。これまでの自由貿易協定では関税の撤廃・削減をしない「除外」等の規定があったが、TPPでは存在しない。 ●関税撤廃へ突き進む7年後に米国など農産物輸出5カ国と、関税などについて全面的に見直すことを義務付けられている。 ●遺伝子組み換え食品の輸入増大既存の自由貿易協定に比べて、遺伝子組み換え作物輸出国の義務があいまいで、輸入国の権利が弱められている。
●輸入規制ができない食品などの輸入に安全基準を作る際、海外の事業者や他国などの利害関係者が意見を出すことが可能になっている。また、輸入規制に関して厳密な科学的証拠が求められるようになる。予防原則に基づいて安全確保のために取る措置は排除される可能性が高い。 ●食品表示を決められなくなる各国の工業製品や食品添加物、食品表示の基準やルールが貿易の障害にならないようにすることが定められている。「強制規定」等のルールを作る際には他国の利害関係者を検討に参加させる。日本が厳しい遺伝子組み換え食品の表示をしようとしても、米国の事業者から反対されてできなくなる恐れがある。
●薬価決定に製薬企業が影響及ぼし高止まり 医薬品や医療機器の新たな保険収載について、「独立した検討過程」を設けることや、保険収載しないという「決定に直接影響を受ける申請者」が、不服審査を開始できると規定している。 ●特許強化でジェネリック薬の普及阻む医薬品の知的財産保護を強化するために、@特許期間の延長Aバイオ医薬品(抗がん剤やC型肝炎の治療薬など)の新薬のデータを公開しない保護期間の構築―を行う。ジェネリック薬の製造に大きな障壁となり、普及を阻むことが懸念される。また新薬価格の高止まりが続けば、国の財政負担が重くなり、患者負担の引き上げにつながる恐れもある。
●共済が民間保険と競争TPPでは「金融サービス」として保険、銀行など広範な分野が対象になっている。米国政府は「共済は民間保険会社に比べて優遇措置を受け続けている」と批判している。各団体がおこなう助け合いの共済制度やJA共済、全労済、COOP共済、都道府県民共済など、さまざまな共済制度のあり方が議論されることが想定される。
●国の制度やルールを決められない TPPにはISDS条項が盛り込まれている。投資家が投資先の国の措置によって損害を被ったと判断した場合に、救済を求めて仲裁手続きを利用できる制度だ。仲裁人は多国籍企業を依頼主とするような国際投資を専門とする弁護士など。訴えられた国に不利な判断を下す可能性が大きい。
●地域経済を守れない自治体などが地域経済の活性化を目的に、地元から雇用や物品、サービスを調達する「現地調達」を禁じている。 ●環境保護は努力目標 環境保護はあくまで努力目標。具体的な罰則や企業への責任追及を求める規定がほとんどない。
批准急ぐ日本は異常
|
リーフレット「 そうだったのか!TPP」無料公開中 ご活用下さい各分野の専門家らで作るTPPのテキスト分析チームは、TPPの問題をイラストを使って分かりやすく解説したリーフレットを作成しました。無料で提供しています。医療分野の執筆は保団連が担当しました。 |
以上