負担増、受診抑制の追認にも
―厚労省の医師需給推計―
(全国保険医新聞2016年5月25日号より)
医学部定員数、当面は現行維持
厚労省は4月20日、医療従事者の需給に関する検討会と医師需給分科会に、医師需給は2030年代半ばには供給過剰になるとの推計結果を示した(資料1)。本検討会・分科会は、地域医療構想による病床推計等を踏まえ、医療従事者の需給も見直すとして設置された。医師受給について昨年12月から5回にわたり分科会で検討を進めてきた。
今回の中間報告案では、需要推計(中位)は2024年頃に約30万人で需給が均衡し、40年に約3.4万人の供給過剰になるとしている(図)。医師養成に十数年必要となるため、「既に現時点で将来的な供給過剰が見込まれる」として、医学部定員数は19年度までは原則として16年度の定員数9,262人の水準を維持。また、19年度までの各都道府県からの追加増員の要望は慎重に精査し、20年度以降の養成数は、医師偏在対策の効果なども見つつ検討するとしている。
勤務医の時短見込む
前回の分科会で示された需給推計結果(たたき台)(第4回 医師需給分科会「資料1」)では、臨床医について概ね以下のように推計されている。
供給数は、9,262人に、過去10年分のデータより算出した(再)受験率・合格率、登録率、生残率、就業率等を加味して推計(男女別)する。労働時間、経験や技術の違いを考慮して、30〜50歳代の男性医師の仕事量を1.0とした場合、女性医師を0.8、高齢医師(60歳以上)を0.8、研修医は0.3 (1年目)、0.5(2年目)と設定して推計する(需要推計でも同様に考慮する)。
需要数は、入院医療(一般・療養)は、地域医療構想で算出された必要病床数(4機能ごと)に、病床あたり医師数をかけて算出する。高度急性期・急性期の医師数については、「労働時間の適正化」として、一定の時短を見込んで推計する。
入院外の需要は、将来の外来患者数(訪問診療等を含む)に患者1人あたり医師数をかけて推計する。患者数について外来受療率の推移などを反映する。
推計手法や結果の扱いは慎重に
供給数において、女性医師=0.8は、参考人の印象などをもとに割り出されている上、参考人自身「実態としてはもう少し少ない」と述べている。仕事量の低下は既婚・未婚、子どもの有無・年齢による形であり、介護負担等や国の政策動向は考慮されていない。
需要数では、高度急性期・急性期について回復期・慢性期や診療所の労働時間の水準まで低下させる見込み(上位推計)にとどまる。医師全般の時短が必要である。
外来患者数では、1996〜2014年の受療率の推移(傾き)が0.9〜1.1倍の幅で勘案されているが、高齢者(60歳以上)の受療率がほぼ低下する中、この間の患者負担増などに伴う受診抑制の追認にもなりかねない。
その他、ICT化、業務分担再編なども特に加味していない。医師需給推計は、複数の構成員から懸念が示されたように、多くの係数と仮定が複雑に絡んでいる。推計手法や結果の取り扱いは慎重さが求められる。
以上