新専門医制度、17年度からの全面実施見送り
(全国保険医新聞2016年7月15日号より)
日本専門医機構は、2017年度からの新専門医制度の全面実施を見送った。17年度の新専門医認定をどのように行うかは基本領域の各学会の判断に委ねられる。
例えば、日本内科学会は「新しい専門医制度が開始できるという見通しが得られない場合、7月末をめどに、17年度に関しては内科学会の現制度を継続する判断をしたい」としている。また日本外科学会は、7月末をめどに十分な準備が整った場合は新しいプログラム制を開始し、十分な準備が整わない場合は17年度は現行外科専門医制度による認定を続ける。日本麻酔科学会、日本皮膚科学会、日本脳神経外科学会は17年度は各学会の現行制度で行う。
新専門医制度については、医師の偏在が助長され、地域医療が崩壊するとの懸念や、専門医機構のガバナンス、専攻医のキャリア形成などの問題が指摘され、「拙速」「延期すべき」との声が相次いでいた。
機構の新理事長に就任した吉村博邦北里大学名誉教授は、会見で「専門医機構は、国の医療提供体制にも関わる重要な組織」と述べたが(メディファクス7月5日付)、国の医療提供体制については、現在、各都道府県で地域医療構想の策定が進められ、医師の「地域偏在・診療科偏在」対策の検討が進んでいる。新専門医制度がこうした医療提供体制再編の手段となり、医療費抑制や医師の管理統制、医療へのフリーアクセス制限につながらないか、注視が必要だ。少なくとも現時点では、病院団体や医療現場、国民の声を尊重し、関係者の合意が得られるまで全面的に実施を延期すべきである。
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