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療養病床の絞り込み
―医科2016年診療報酬改定D―

全国保険医新聞2016年7月25日号より)

 

 療養病床など慢性期入院医療では、病床削減・在宅移行を進める方向から、入院患者の要件がより厳しくされた。在宅医療の受け皿の保障もないまま、入院が困難となる事態が懸念される。

区分1は在宅へ―療養病床

 療養病床について、介護療養病床との住み分けを図るとして、より医療依存度の高い患者に対象が絞り込まれた。療養病床では、入院基本料1(看護配置20対1以上)は医療区分2・3の患者が8割以上とされるが、入院基本料2(同25対1以上)にも区分2・3の患者割合が5割以上の要件が導入された。医療区分1相当の患者の70%は在宅移行などの地域医療構想での方針も受けた形である。中医協では、入院基本料2での区分2・3の患者割合は平均60%であるが、患者割合50%以下に当たる病棟が4分の1程度あるとの資料が示されている。

「軽度」ではない区分1

 現状では、癌ターミナル、肝不全で腹水がたまっている状態、全麻手術後1カ月以内で重度な場合などでも、医療区分1になるとの指摘がされており、医療依存度が「低い」患者とはいえない。日慢協による会員調査では、医療療養(25対1)における「看護師による直接の看護提供の頻度」について、「定時以外に1日1回〜数回」、「頻回」、また「24時間」の「観察及び管理が必要」となる患者は約70%と厚労省調査が示す45%と大きく乖離しており、入院できなくなった患者が施設・在宅で看護提供が保障されるかどうか懸念される。

患者要件の厳格化

 医療区分の評価項目も見直された。区分2のうつ症状治療、頻回な血糖検査、区分3の酸素療法について、対象患者の要件がより厳しくなった。区分3に該当していた酸素療法の患者が区分2に引き下げられると入院基本料1では1日1人当たり約240〜400点の減額になる。他方、区分2において、難病は「指定難病」の患者へ対象が拡大された。
 障害者病棟や特殊疾患病棟では、「重度の意識障害のある脳卒中患者」について、療養病棟の包括評価の体系を踏まえて、医療区分1、2相当の点数区分が新設された。投薬・処置を出来高算定できる障害者病棟から原則包括評価になり、入院単価が下がる可能性もある。

夜勤規制緩和で過労懸念

 看護職員の夜勤時間規制(月平均の夜勤時間が72時間以下)が緩和された。常勤換算が廃止されるとともに、計算対象に含める短時間勤務の職員が拡大されたことなどから、算出される平均時間が大幅に下がる結果、これまで以上に長時間の夜勤職員が増えるのではないかと懸念されている。患者の重症度も上がる中、看護労働が一層過酷となり、医療安全低下や看護師不足の深刻化が危惧される。

2016年診療報酬改定における慢性期入院医療をめぐる主な評価

療養病床
(25:1)

療養病棟入院基本料2に、医療区分2・3の患者5割以上の要件を追加(2016年9月まで経過措置)。点数は据え置き。

患者割合又は看護配置(25対1)のみ満たせない病棟で一定の基準を満たしている場合、2018年3月までは95%の点数で算定可。

医療区分

区分2

頻回の血糖検査について、「糖尿病へのインスリン製剤又はソマトメジンC製剤の注射を1日1回以上」実施することを要件に追加。

うつ症状に対する治療で、うつ症状に対する薬の投与は精神保健指定医が行う場合に限定。

区分3

酸素療法については、常時流量3L以上を必要とする状態、心不全状態(NYHA重症度分類のV度又はW度)、肺炎等の急性増悪で点滴治療を実施している状態(実施から30日間)に限定。上記以外については、区分2にランク引き下げ。

難 病・
障害者等

障害者施設等病棟、特殊疾患病棟において、重度意識障害を有する脳卒中患者(医療区分3相当は除く)は、療養病棟の包括評価体系へ見直す。

在宅復帰

在宅復帰機能強化加算(療養病棟1)について、1カ月以上入院して在宅に退院した患者が50%以上との要件について、「1カ月以上の入院」の規定は自院内での転棟患者に限定する(急性期病院等からの受け入れをより評価する)など。

入 院 食

流動食のみを経管栄養法で提供した場合、1食あたり51〜 65円の報酬減。特別食加算(同76円)も算定不可。

そ の 他

月平均夜勤時間の計算対象(7対1、10対1以外。療養病床25:1も除く)について、「月夜勤時間が8時間以上の者」にまで算入を緩和、常勤換算による算出は廃止など。

医師事務作業体制補助加算(50対1、75対1、100対1)の対象に療養病棟を追加。

※ 2016年度診療報酬改定資料より作成。

以上