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格差、社会保障、TPP、改憲
―参院選後の国会の論点―

全国保険医新聞2016年7月25日号より)

 

 7月11日に投開票が行われた参院選では、自民・公明与党が参院選での過半数を確保する結果となった。今後8月初旬に3日程度の臨時国会が開かれた後、9月中旬からの臨時国会で補正予算案、TPP承認案などが論議される見通し。格差、社会保障、憲法に関する議論も注視が必要だ。

アベノミクス

 安倍首相は参院選を通じて、有効求人倍率が高水準で推移しているなど、アベノミクスの成果を強調した。しかし、実質賃金は5年連続で低下し、2人以上世帯の消費支出も2年連続で前年比マイナスとなっている。安倍首相が強調する有効求人倍率も、求人が増えているのは非正規雇用者ばかりだ。労働条件の悪化が進み、離職が繰り返されているのが実態だ。
 安倍首相は参院選後に、アベノミクスへの信任を得たと述べたが、このまま推し進めればさらなる格差拡大と国民生活の破綻の恐れがある。

医療・社会保障費

安倍政権は、2018年度まで国が負担する社会保障費の自然増を毎年3000〜5000億円削減し、5000億円程度に抑えることを目標としている。
 今後実施が検討されているのが、入院時居住費負担の導入、「かかりつけ医」以外を受診した場合の定額負担(1回100〜500円)、75歳以上の窓口負担の2割化、70歳以上の高額療養費限度額の引き上げ、市販類似薬の負担増や保険外し、先発品と後発品の価格差の患者負担、などだ。

TPP

 政府は9月中旬からの臨時国会でTPPの承認案と関連法案の成立を目指すとされている。
 医療分野では、薬価への影響が懸念される。協定文では中医協(中央社会保険医療協議会)での保険適用の可否や薬価の決定プロセスについて、製薬企業などの利害関係者に対する透明性と公正な実施の確保が定められた。製薬企業の影響力が強まり、薬価高止まりが懸念される。
 また、協会・医会でも多くの会員が加入する共済制度もTPPの影響で民間保険会社並みの規制が課される恐れある。

憲法改正

 安倍首相は参院選翌日の記者会見で、自民党は憲法改正を掲げており、自民党の憲法改正草案を実現していくことは総裁としての責務と述べた。
 参院の議席は、改憲に前向きな自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする会の4党で憲法改正の発議に必要な3分の2(162議席)に達した。衆院では現在、与党だけで3分の2を占めている。緊急時に首相に強大な権限を与える緊急事態条項の創設や、9条改正の議論が本格化する可能性がある。 
 もっとも共同通信の調査では、参院選で投票した有権者のうち、安倍政権下での改憲に50.0%が反対しており、賛成の39.8%を上回っている。

以上