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高すぎる日本の薬、薬価の決め方 透明化を
―三浦清春 保団連副会長・政策部長に聞く―

全国保険医新聞2016年9月5日号より)

 

 いま、1人当たり年間数千万円にも上る「高額薬剤」をめぐって厚労省、中医協などで議論が進んでいる。日本の総医療費の3割を占める薬剤費のあり方が問われる。日本の薬価問題をどう見るか、全国保険医団体連合会の三浦清春副会長・政策部長(写真)に聞いた。

 

オプジーボ緊急引き下げを

―いま抗がん剤やC型肝炎治療薬など、桁違いに高い薬価が問題になっています。保団連としてどう考えますか。

 極端に高すぎる薬価は、高額療養費制度を用いても患者の負担は過大となり、医療保険財政にも影響を及ぼします。
 抗がん剤「オプジーボ」は、14年に悪性黒色腫を適応として薬価収載された当初は、対象患者470人と見込まれていました。その後、15年12月に非小細胞肺がんに適応が拡大され、対象者は5万人に拡大しました。年間の1人当たり薬剤費は約3500万円、総額で1兆7500億円に上るともいわれています。今後も適応が拡大されれば、対象者の増加がさらに見込まれるのに、当初薬価が固定されたままというのはどう見ても不合理です。「オプジーボ」の薬価は緊急に引き下げる対応が必要です。

 

英仏の2倍、独の1.3倍

―保団連は以前から日本の高薬価、高薬剤費構造を指摘してきました。

 保団連が11年に実施した「薬価の国際比較調査」では、日本の薬価は英仏の2倍、独の1.3倍に上るという結果でした。最近の保団連の調べでは、「オプジーボ」の薬価は英国に比べて日本は約5倍に上ることがわかっています。わが国の医薬品産業は、他の製造業に比べて異常に高い収益率を享受していることが高薬価の原因になっています。
 わが国の医療費総額に占める薬剤費の割合(薬剤費比率)は3割に及び、国際的に見ても突出しています。医療費は年々増加していますが、その主要な原因は薬剤費です。高薬価、高薬剤費構造を見直すことは、緊急の重要課題です。
 保団連は11年の調査に基づき、高薬価構造の是正、製薬企業の高収益性の適正化を図ることで、国民皆保険制度拡充のための財源にすべきと提言しています。

 

薬価算定過程の透明化を―審議は非公開 議事録もなし

―高い薬価を生み出す構造を改めるには何が必要でしょう。

 薬価算定の経過を透明化することがまず必要です。わが国の薬価は、厚労省に設置された薬価算定組織が原案を検討し、算定案を策定した上で、中医協総会で了承を得る流れになっています。しかし、薬価算定組織の審議は非公開で、議事録も作成されていません。事後的に薬価算定の妥当性を検証することもできなくなっています。
 また薬価算定に当たり、有用性、画期性、革新性などの言葉を冠した各種の加算がありますが、その「価値評価」の根拠はあいまいです。厚労省の裁量的な判断が介在する余地が極めて大きく、薬価算定が不透明であることの一因といえます。
 今回の高額薬価の問題は、こうした薬価算定制度の矛盾が極端な形で現れていると考えています。

 

国民皆保険を守るために

―政府はこの間、「医療費の高騰を抑えるため」と患者負担の引き上げを進め、今後2025年に向けてさらなる患者負担増と給付削減を計画しています。

 保団連は、政府の進める医療費抑制政策に対して、国民皆保険制度を維持すること、経済力にかかわらず患者・国民に良質な医療を平等に保障することを訴えています。また、社会保障予算が年々削減される中、医院経営もますます厳しくなっています。医療現場では、後発品割合を増やし、多剤投薬を減らすなど、懸命な経営努力を行っています。
 薬価算定過程が不透明で、国際的に見ても高すぎる日本の薬価が、医療保険財政を圧迫し、患者・国民と医療機関の経営にしわ寄せが及んでいます。
 私たちは、国民・患者さんの声を集め、政府、国会に届ける取り組みを進めていくことにしています。

薬価の国際比較調査に基づく
保団連の医療保険財源提案【骨子】

斬高薬価維持制度である「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬加算)
の即時撤廃

後発品のない先発品薬価の大幅引き下げ

公正で透明な薬価制度改革の実施

以上