ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

 

なぜ急ぐTPP
―内容「秘密」のまま―

全国保険医新聞2016年9月15日号より)

 

 政府は9月26日からの臨時国会で、春の通常国会で審議が中断していたTPP(環太平洋連携協定)の批准承認案と関連する国内法の改正案を審議する。貿易問題に留まらない広範な分野に影響し、国のあり方を変えるとも言われるTPPは臨時国会の大きな争点となる。

 

皆保険の充実を困難に

 全国保険医団体連合会は、TPPの発効によって、巨大製薬企業が保険適用や薬価決定プロセスに影響力を強め薬価が高止まりすることなどを通じて保険財政を圧迫し、国民皆保険の充実を困難にすることなどを指摘し、批准に反対してきた。

 

発効は既定路線ではない

 安倍首相は5日、G20の首脳会議閉幕を受けた記者会見で、TPP承認案・関連法案について、「できるだけ早く国会承認を得ることで早期発効への弾みとしたい」と述べたと報じられる。臨時国会で早期成立を目指す考えだ。
 TPPは、参加国全てが2年以内に国内手続きを完了できない場合、GDP(国内総生産)の合計が85%以上を占める6カ国以上が合意すれば発効となる。参加国のGDPの割合では日本と米国で8割近くを占めており、日米が批准しなければ発効しない。
 米国では今年11月の大統領選挙を前に、民主、共和両党の有力候補がTPPに反対の立場を示した。米国の批准が見通せない中、TPP発効は既定路線とは言えなくなりつつある。

 

資料は黒塗り

 むしろ批准を急げばTPPの問題点が明らかにされないまま後戻りできなくなる危険性が大きい。今年4月のTPP特別委員会で、野党議員が甘利元TPP担当相と米国のフロマン通商代表の交渉内容の情報開示請求をしたところ、「秘密保持契約」のために全て黒塗りの資料が提出された。春の通常国会ではこうした秘密主義による混乱の影響などにより審議が中断に追い込まれた。
 TPPは貿易に留まらず、▽食の安全基準の後退▽助け合いの共済制度を民間保険のように扱う▽国の主権の侵害―など広範な影響が懸念されているが、臨時国会でも秘密主義のために必要な審議ができない可能性がある。
 9月の保団連理事会ではTPPを批准させない取り組みを強めることが確認された。

以上