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介護保険せめぎ合い
―給付維持か、削減・負担増か―

全国保険医新聞2016年11月5日号より)

 

 厚労省の社保審介護保険部会では、介護保険制度の改定に向けた議論が進んでいる。軽度者向けサービスの保険外しなどは世論の批判が高まり、来年の通常国会への法案提出が見送られたが、さまざまな給付削減・負担増の検討が続いている。

 

現場は懸念「自立支援、重症化予防に逆行」「サービス継続を」

■軽度者外しは見送り

 焦点の一つであった要介護1・2の生活援助サービスの保険外し(地域支援事業化)については、地域支援事業の把握・検証をした上で検討するとし、法案提出は見送られた。要支援者の訪問・通所介護が地域支援事業に移行途上の中、さらなるサービス移管は時期尚早などの異論に押された形だ。一方、2018年同時改定で訪問介護(生活援助中心型)について「人員基準の見直し等を行う」として、介護報酬での削減を打ち出した。
 また、生活援助その他の給付に関して、要介護度等に応じて負担に違いを設けることを提起した。軽度者の負担を重くする方向での提案に対し、「要介護度の改善でかえって自己負担が重くなり、自立支援や重度化予防に逆行する」などの意見が出ている。

 

■福祉用具外しも見送り

 福祉用具レンタルや住宅改修サービスの保険外しについては、福祉用具協会などで進める「福祉用具レンタルの原則自己負担化に反対する署名」や、サービス継続等を求める自治体意見書採択が急速に広がったことを受けて法案提出が見送られ、高額なレンタル料などの是正に向けて、価格情報公表などを進める方向の代案が示された。他方で、給付範囲縮小と利用料引上げなども検討するよう依然求めている。

 

利用料、負担上限、保険料…負担増の検討は継続

■3割負担も視野

 利用料負担では、「医療保険における患者負担割合を踏まえ」るなどとして、1〜3割負担を視野に入れた検討の方向性を示すとともに、特に「軽度者」の利用料引上げなどを求めている。
 高額介護サービス費についても、医療保険(高額療養費)を踏まえ、一般区分の月負担上限額を3万7,200円から4万4,000円へ引き上げるよう求めている。約22万人が負担増となる。
 さらに、介護保険施設利用時の食費・居住費補助(補足給付)について、「一定額以上」の宅地は担保とする要件について引き続き検討を促している。子や孫の遺産(宅地)さえも国が没収していく構えである。

 

■応能負担理由に国費削減

 保険料(40〜64歳)については、加入者数に応じた算定から、平均収入に応じて決める「総報酬割」の導入を引き続き求めている。平均収入が高い健保組合等の保険料を負担増とすることで、これまで負担能力の差を補填する形で協会けんぽに投入してきた国庫補助1450億円をなくすとしている。健保組合は、国の負担を健保組合に肩代わりさせるものと批判している。国庫補助がそのまま廃止となれば、介護サービスの充実にはつながらない。

以上