現行ルールでも最大50%
―オプジーボ 緊急引き下げ―
(全国保険医新聞2016年11月5日号より)
英米に比べて日本では異常に高額となっている抗がん剤、オプジーボ薬価(図)の引き下げ幅が議論になっている。厚労省は10月6日の中医協薬価専門部会で、2017年度に最大25%引き下げる方針を示した。これに対して、経済財政諮問会議(10月14日)の議論でも「50%以上の引き下げが必要」との意見が出されている。
今回のオプジーボの緊急引き下げについて、厚労省はできる限り既存のルール、具体的には市場拡大再算定ルールを用いることを中医協に提案し、了承されている。
市場拡大再算定ルールは、当該品目の年間販売額(薬価ベース)が一定額を超えた場合、次の薬価改定で薬価を引き下げるというもの。16年に特例が設けられ、@年間販売額1000億円〜1500億円で最大25%、A1500億円超で最大50%引き下げられる。
25%の引き下げ方針は、特例@に則したもの。オプジーボの製造元である小野薬品工業が公表した2017年度3月期の売上げ予想1260億円に基づいている。
この「1260億円」は使用患者数を悪性黒色腫450人、非小細胞肺がん1万5,000人とし、出荷価格ベースで想定したもので、今年4月時点の予想。しかしオプジーボは今年8月、一部の腎がんが効能追加された。今後もさらに追加が見込まれている。現在、ホジキンリンパ腫で承認申請されており、胃がん、食道がん、肝臓がんなどで治験が行われている。財政制度等審議会財政分科会(10月4日)の資料は、効能追加後の予想対象患者数と売上予想は「不明」と記している。
一部腎がんの効能追加で新規対象患者となるのは約4,500人と想定されている。約1万5,000人の対象患者で1260億円の売上げを見込むメーカーの数値を用いて、追加適用を加えた予想売上額を単純計算すると1504億円。薬価ベースに引き直せばさらに上振れする。現時点で、1500億円を超える可能性が高いとすれば、引き下げ幅を25%と決め打ちするべきではない。塩崎厚労大臣も10月25日の会見で「25%というのはルール全体ではない」としている。市場拡大再算定特例のA(年間販売額1500億円超)を用いた「最大50%引き下げ」を視野に入れて、対応を検討すべきである。
以上