【歯科社保情報】あらためてふりかえる16年改定E
―SPT算定の留意点―
(全国保険医新聞2016年11月5日号より)
歯科の今次改定の内容をシリーズで解説する。今回は歯周病安定期治療(SPT)について整理する。
「地域包括ケアシステムの推進」の一環として歯科では、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」いわゆる「か強診」が新設された。Ceに対する処置やSPTの給付内容とは直接関係のない訪問診療料の算定実績や高額な医療設備投資などの施設規準を満たす必要がある。「か強診」は3カ月に1回などの算定間隔の制限を取り払うことで、未届の場合と比べて高い点数が設定されている。その中の歯周病、特にSPTについて考えたい。
SPTは、歯管または歯在管を算定し、4ミリ以上の歯周ポケットを有し、歯周基本治療等が終了して一時的に症状が安定した患者に対し算定する。歯周組織の安定状態を維持するために継続的な治療を開始し、管理計画書を作成し、文書により患者又はその家族に対して提供した場合に、1口腔月1回に限り算定する。2回目以降は、必要に応じ歯周病検査を行い、症状が安定していることを確認する。SPT開始後、歯周外科手術を行なった場合は、歯周精密検査を行い、再度、病状の安定が確認された日以降、SPTを再開する。
SPT(T)
改定前のSPTと同じであるが、原則として、前回実施月より2カ月空けなければならない。ただし、次の場合は3カ月に満たなくても月1回算定できる。
@歯周外科手術を行なった場合
A侵襲性歯周炎の場合
B全身症状により歯周病に大きな影響のある場合
C全身症状により歯周外科が行えない場合
※B、Cは主治医からの文書提供が必要
SPT(U)
「か強診」に限って月1回算定する。歯周精密検査を行ない、症状安定を確認した後に開始する。ただし、同月に行なった精密検査はSPT(U)に含まれる。口腔内カラー写真の撮影も必須である。初回は全顎の写真撮影をし、2回目以降は管理対象の部位を撮影する。
SPT(T)もしくはSPT(U)のどちらを行うかは患者の状況に応じて、主治医が患者ごとに判断して、治療を開始する。今回の改定で骨の吸収要件が無くなり4ミリ以上の歯周ポケットを有する患者が対象となり、算定が容易になった。開始後は、SPT(U)からSPT(T)に移行することはできない。「か強診」の施設基準から外れた場合はSPT(T)に戻る。
SPT(T) 、SPT(U)の処置内容は同じで、包括されている処置、要件に差があるが、同じ処置を行っても、点数に約1.5倍もの開きがあり、一物二価の状況は日常臨床において混乱を招く結果となり得る。また、毎回の写真撮影は患者も術者も負担となる。写真の保存、管理を適格に行うことが重要となる。
(理事 兵頭正道)
以上