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TPP参加国半数が国内手続き慎重
―早期批准に警鐘―

全国保険医新聞2016年11月15日号より)

 

 TPP(環太平洋連携協定)批准を巡って、承認案などが衆院特別委員会で強行採決されるなど、早期成立を目指す与党と徹底審議を求める野党との対立が深まっている。審議に先立つ10月31日にはTPP参加国であるニュージランド・オークランド大学教授のジェーン・ケルシー氏が国会内でTPPを巡る国際情勢について講演し、早期の批准に警鐘を鳴らした。

米国で何が起こるか見極めて

ニュージランド・オークランド大教授 ジェーン・ケルシー氏 講演

 TPPは参加12カ国全てが議会承認と法改正などの国内手続きを2年以内に完了できない場合、GDPの合計が85%以上の6カ国以上の合意で発効となる。GDPの割合では米国一国で6割以上を占める。米国が批准しなければTPPは発効できない。

 

TPP反対の候補が大統領に

 しかし米大統領選挙ではTPPに反対を掲げていた共和党のドナルド・トランプ氏が当選した。米国の批准は見通せない状況だ。
 ケルシー氏によれば、TPP参加国の半数は米国の選挙や政治の行方を見極めるまで国内手続きを進めない方針だ。ベトナムでは11月末の採決といわれていたが、17年まで審議を遅らせることとなった。オーストラリアも来年まで上院の採決を行わないことにした。カナダでは法案が議会に提出されておらず来年まで採決はないことがはっきりしている。この他チリ、ペルー、メキシコも国内手続きに慎重な姿勢を見せている。
 「日本、ニュージーランドなどの数カ国は、なぜ米国で何が起こるかを見極めようとしないのか。状況は全く不透明だ」「トランプ氏は今ある協定自体を捨てると明確にしている」。
 ケルシー氏は「ニュージーランドではTPPに合わせて既に医療などの国内制度の改正をしつつある。近く議会で採決される」と話し、「(米国の方針が見通せない中)なぜ我々は国内手続きを行っているのか。日本も同じ問題を抱えているのではないか」と問い掛けた。
 ケルシー氏はまた、米国に先立って他の参加国が国内手続きを急ぐ危険性を指摘する。国内制度の改正に着手してしまえば、米国が求める水準に足るものとなるよう、圧力を掛けられるという。

 

未来は自分たちで決める

 ケルシー氏は「米国議会は彼らが法案を通過させる前に、他の参加国が先に手続きを完了することを求めている」と話す。TPP参加にあたって各国は関連する国内法の改正を行うが、米国は他国の手続きが米国にとって満足に足るものかどうかの証明も行うという。ケルシー氏によれば、実際にオーストラリアでは著作権を現行の50年から70年に延長する法案が議論されていたが、オーストラリアが加えた教育関係のものを除くという例外が認められないとの要求が米国から出され、変更を迫られた。「私が大変懸念するのは、米国議会の議員たちがこの証明手続きに、より大きな影響力を求めていることだ」。
行った改正は戻らない。
 ケルシー氏は、「仮にTPPが発効しなかったとしたら、私たちの政府はTPPのために始めた変更を破棄するだろうか。私はそうは思わない」と話し、各国が国内制度の改正を進めることで結果として米国はTPPの恩恵を享受することになると指摘した。
 また、日本とニュージーランドが米国の状況に関わらずTPPの批准を進める背景には、TPPを口実にしてさまざまな制度改正をしたい国内の政治情勢があると指摘。本当に必要ならば民主主義の手続きを経て行うべきだと批判した。

 

多国間協定に反発する世界の流れ

 一方、世界各国では多国間貿易協定に反発する流れが生まれていると話した。EUと米国の間で行われてきたTTIP(環大西洋貿易投資連携協定)では、一般市民が被害を受ける貿易協定に対して参加国から批判が上がり交渉が行き詰まっている。22の国・地域で交渉されてきたTiSA(新サービス貿易協定)にも参加国からの反発が起きている。米国の一般市民は、NAFTA(北米自由貿易協定)を通じて企業だけが利益を得て一般市民が多くを失うという経験をした。彼らは「もう十分だ」と声を上げ、TPPに反対していると紹介した。
 「潮目は変わりつつある。自分たちの未来を他国や企業に決められるのではなく、自分たちで決めるのだと声を上げよう」。

以上