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入院「居住費」月1万円 症状重い患者からも
―厚労省が負担増案―

全国保険医新聞2016年12月15日号より)

 

 患者負担増計画について検討してきた厚労省・社会保障審議会医療保険部会は12月8日、「議論の整理(案)」を示した。高齢者や人工呼吸器を使用するなど医療の必要性の高い患者も対象に含まれる。一方、具体的な提案が見送られた項目もある。負担増阻止の世論を広げる取り組みが、重要性を増している(「患者負担増計画を考える」の記事参照)。

「患者負担増計画」について
厚労省の検討結果(2016年末)

入院時の居住費(光熱水費相当)を1日320円から370円に引き上げ、一般病床等まで拡大

→@

65歳以上の療養病床について、医療区分Tは1日320円から370円に

A

医療区分U、Vに居住費負担を拡大(2017年10月から200円→2018年4月から370円)

B

一般病床や精神病床等への拡大は見送り

70歳以上の患者負担上限額の引き上げ

70歳以上の少なくとも60%近くの方(医療保険加入者数の比率)が引き上げの対象に

「かかりつけ医普及」を理由に受診時定額負担の導入

湿布薬、目薬、ビタミン剤、うがい薬、漢方薬などの市販品類似薬の保険外し

75歳以上の患者負担を原則1割から2割
→引き続き検討

 厚労省案では、1日320円の入院時の居住費を370円に引き上げる。さらにこれまで負担のなかった医療の必要性の高い患者(医療区分U、V)も徴収対象とする。症状の重い患者にも、月1万円程度の負担を課すものだ。70歳以上の高額療養費制度の限度額は、「現役並み」「一般所得」について引き上げが提案された。低所得者を中心とする後期高齢者の保険料負担軽減特例廃止の案も示された。
 医療保険部会は今年7月から、政府が昨年公表した「経済・財政再生計画」で「改革項目」とされた患者負担増を審議してきた。議論の対象となったのは、▽ かかりつけ医普及を理由にした受診時定額負担の導入▽湿布薬、痛み止め等市販品類似薬の保険外し▽入院時の居住費(光熱水費相当)の引き上げと対象拡大▽70歳以上の高額療養費の患者負担上限額の引き上げ▽75歳以上の患者負担を原則1割から2割へ―などである。

具体化見送られた項目も

 一方で、受診時定額負担の導入、市販品類似薬の保険外しは、「引き続き検討をすすめる」として、具体的な提案は見送られた。
 負担増を食い止めるため、保険医協会・医会、全国保険医団体連合会は1年半にわたり、患者署名、クイズチラシ、会員署名等に取り組んできた。負担増計画の一部で具体化が見送られたのは、医療の現場からの懸念の声に押し返されたものだ。もっとも来年も引き続き議論されることから、今後も予断を許さない。
 保団連は、負担増計画を許さない世論を広げる取り組みに、さらに力を入れる。

以上