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【薬価のからくり】第1回 オプジーボが問いかけるもの
―高額新薬が保険財政に影響―

全国保険医新聞2017年3月15日号より)

 2017年2月より抗がん剤オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価を半額に下げる―2016年11月、中医協は緊急薬価改定を了承した。12月、厚労相・官房長官等4大臣が薬価制度の抜本改革を行う「基本方針」に合意し、17年末の骨子取りまとめに向けて中医協で議論が進む。概算医療費は、13年連続で過去最高を更新し、2015年度は40兆円を突破。C型肝炎等の高額新薬が医療費を押し上げ、保険財政に多大な影響を及ぼす事態があらためて浮き彫りになった。薬価制度の現状と課題について考える。

高額新薬の緊急対応へ

 「1剤で国が亡ぶ」。16年2月の厚労省薬食審部会で日赤病院の医師委員が強い懸念を示した。オプジーボの1回投与(体重60キロ)で133万円。肺癌は2週に1回で年26回投与で3500万円。対象となる肺がん患者の半数5万人で年1兆7500億円。「この1剤で国が亡びかねない」と強調した。4月の財務省審議会でも同医師は同様に発言。オプジーボ発言が波紋を呼ぶ中、厚労省は7月の中医協で、単価が高く市場規模が極めて大きい高額薬剤について薬価引き下げ、「適正使用」など緊急対応の検討を提案した。

オプジーボ薬価、日本は英の5倍

  緊急改定の是非で議論が紛糾する中、保団連はオプジーボ薬価が1瓶(100mg/10ml)につき日本73万円に対し、米国30万円、英国14万円と極端に高いとの調査結果を2度にわたり記者発表。緊急に英米独仏の実勢価格まで大幅に引き下げるよう訴えた。10月には国会で塩崎厚生労働大臣も保団連の調査結果を事実上認めた。続く経済財政諮問会議でも保団連の調査結果が示され、「50%以上の引き下げが必要」等の意見が出て11月の薬価半額下げとなった。


薬価制度の矛盾が噴出

 オプジーボをめぐる経過からは、薬価制度のさまざまな矛盾・問題点が見えてくる。
 オプジーボは2014年9月に皮膚がんの一種メラノーマを対象に薬価収載された。申請企業が示したピーク時の患者数が年470人、売上31億円の見込み等を基に原価計算方式で薬価73万円等で算定されている。2015年12月に肺がんの一部にも適用が認められ、患者数が約1.5万人と約32倍に大幅拡大し、申請企業も売上予測を年1260億円へ上方修正した。効能追加等に伴い市場が大幅拡大した場合、売上規模等に応じて薬価を下げる改定ルールがあるが、該当品目の判定は改定前年の薬価調査月(9月分取引)末日となる。年末に適応拡大したオプジーボは2018年改定と2年先になることが、今回の異例の改定の直接の契機となった。
 また、オプジーボは、日本で世界初承認後、英米独で承認されたが、海外価格も参考に薬価を補正するルールは現在、事後適用されない点も議論となっている。

以上